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短くわかる民事裁判◆
理由不備による原判決破棄:最高裁2004年11月26日第二小法廷判決
 「絶対的上告理由:理由不備」で説明したように、最高裁1999年6月29日第三小法廷判決以降、最高裁が絶対的上告理由の1つである理由不備(民事訴訟法第312条第2項第6号)にあたりとするケースは、稀になっています。
 現在の最高裁の理由不備についての考え方を理解するためにも、実際に理由不備に該当するとされたケースを検討しておくことは重要で、意味があることと思います。

 原告(被上告人)の所得税確定申告に対し、広島西税務署長(被告、上告人)が必要経費の算入を一部否認して増額更正(国税通則法第24条)及び過少申告加算税の賦課決定(国税通則法第65条)を受け、これらの処分の取消を求めて提訴しました。被告は、否認した必要経費について、支払手数料については所得税法第157条(同族会社等の行為・計算の否認)の規定が適用される、接待交際費等については事業との関連性または事業遂行上の必要性が認められない、家事上の経費と認められるなどの主張をし、原判決をその主張を当事者の主張として記載した上で、前者の主張が失当であると判示し、後者の主張について判断を示さずに、原告の請求を全部認容(更正処分、過少申告加算税賦課処分の取消)しました。これに対して広島西税務署長が上告し、最高裁2004年11月26日第二小法廷判決(判例時報1895号33〜35ページ【6】)は、理由不備の違法があるとして、原判決を破棄して原裁判所に差し戻しました。その趣旨としては、上告人の2つの主張は別々の経費についてのものであるから、前者の主張が失当であっても後者の主張が正当であれば全部認容することはできず、後者の主張について(当事者の主張として記載しておきながら)判断をしないのでは、全部認容の主文を導き出す理由の一部が欠けているということと解されています。
(判例時報掲載の最高裁調査官の解説記事で趣旨を補っています)

 上告については「まだ最高裁がある?(民事編)」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる 「最高裁への上告(民事裁判)」もばいる「高裁への上告(民事裁判)」でも説明しています。

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