◆短くわかる民事裁判◆
理由不備による原判決破棄:最高裁2012年10月12日第二小法廷判決
「絶対的上告理由:理由不備」で説明したように、最高裁1999年6月29日第三小法廷判決以降、最高裁が絶対的上告理由の1つである理由不備(民事訴訟法第312条第2項第6号)にあたりとするケースは、稀になっています。
現在の最高裁の理由不備についての考え方を理解するためにも、実際に理由不備に該当するとされたケースを検討しておくことは重要で、意味があることと思います。
原告ら(被上告人ら)と被告(上告人)が父親から相続して共有する建物を、被告が賃貸して賃料を取得するとともに自らの使用していたことについて、原告らが被告が共有建物の賃貸によって得た賃料相当額及び自己使用した賃料相当額の不当利得とそれに対する悪意不当利得者の法定利息(共有物件であることを知って共有者と合意なく単独利用しているので民法第704条により受けた利益に利息を付して返還する義務がある)の支払を求めて提訴しました。
これに対して被告は建物に関する不当利得返還請求権及びこれに対する利息の支払請求権について、それぞれその一部について消滅時効が成立している通牒し、原判決はそれを当事者の主張として記載しながら、建物に関する不当利得返還請求権についてはその発生を一部認めその一部について消滅時効の成立を認めただ、利息の請求についてはその発生を一部認めつつ消滅時効の主張については判断せず、原告らの請求を認めました。
最高裁2012年10月12日第二小法廷判決(判例時報2188号10ページ【4】)は、それを指摘した上で「そうすると、原判決のうち建物に関する不当利得金に対する利息に係る被上告人らの請求を認容した部分は、消滅時効の抗弁についての判断がなく、主文を導き出すための理由の一部が欠けているといわざるを得ず、理由不備の違法がある。」と判示して、原判決のうち不当利得金に対する利息に関する部分を破棄して原裁判所に差し戻しました。
このケースは、原判決が当事者の主張として記載した消滅時効の主張が認められるか認められないかで、認められる利息請求の範囲、したがって主文が変わってくるにもかかわらず、その消滅時効についての判断が示されていないため、主文を導く理由の一部が欠けているということになるものです。
上告については「まだ最高裁がある?(民事編)」でも説明しています。
モバイル新館の「最高裁への上告(民事裁判)」、
「高裁への上告(民事裁判)」でも説明しています。
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