◆短くわかる民事裁判◆
控訴の趣旨:一部敗訴の場合
控訴状の必要的記載事項は、当事者及び法定代理人、第1審判決の表示及びその判決に対して控訴をする旨です(民事訴訟法第286条第2項)ので、控訴の趣旨は法令上の必要的記載事項ではありませんが、控訴をする当事者(控訴人)が控訴裁判所に求める判決内容を判決主文の形で記載するのがふつうです。
全部敗訴した判決に対する控訴の趣旨については「控訴の趣旨:全部敗訴の場合」で説明しましたが、一部敗訴の場合、少し複雑というか難しくなります。
例えば500万円の請求のうち300万円が認められた判決(主文は、1.被告は、原告に対し、金300万円を支払え。2.原告のその余の請求を棄却する。3.訴訟費用はこれを5分し、その3を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。)に対して、原告が控訴する場合の控訴の趣旨は、「1.原判決を次の通り変更する。2.被控訴人は、控訴人に対し、金500万円を支払え。3.訴訟費用は、第1審、第2審を通じて被控訴人の負担とする。」、被告が控訴する場合の控訴の趣旨は、「1.原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。2.被控訴人の請求を棄却する。3.訴訟費用は、第1審、第2審を通じて被控訴人の負担とする。」とするのがふつうです。
この例で原告が控訴する場合に、「1.原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。2.被控訴人は、控訴人に対し、金200万円を支払え。3.訴訟費用は、第1審、第2審を通じて被控訴人の負担とする。」という文例もありますが、ちょっとわかりにくく違和感が残ります。(敗訴部分を取り消すので、原告が勝訴した被告に300万円の支払いを命じる部分はそのまま残っている、それに追加して200万円を支払えということなので、結局500万円を支払えということで、原告の請求を全部認容しているということです)
また、この例で被告が控訴する場合の第2項を「前項の部分につき被控訴人の請求を棄却する」「被控訴人の上記取消にかかる部分の請求を棄却する」という文例もあり、理屈としてはこちらの方がより正確とされます。(これも、敗訴部分が取り消されるので勝訴部分の200万円の支払いは認めない(請求を棄却する)という部分は残っていて、その部分は既に請求が棄却されている以上、全部の請求を棄却するのではなくて、取り消した原告勝訴(被告敗訴)部分についてだけ請求を(追加的に)棄却するということです)
控訴については「控訴の話(民事裁判)」でも説明しています。
モバイル新館の「控訴(民事裁判)」でも説明しています。
**_****_**