◆短くわかる民事裁判◆
控訴審での口頭弁論続行
控訴審では第1回口頭弁論期日以前に控訴人から控訴理由書が提出され、新たに書証を提出する場合にはそれも事前に提出されていて(もちろん、人証申請や文書送付嘱託の申立てなどをする場合にはそれも事前に提出しますし、裁判所からは早期提出が求められます)、被控訴人からそれに対する反論の控訴答弁書や書証等が提出されています。
控訴裁判所は、事前にそれを検討し、裁判官3名で合議をした上で第1回口頭弁論期日に臨んでいます。
それらの検討の結果、裁判所として第1審の審理に不十分な点があるという心証を持ったり、それとは別に控訴人・被控訴人の主張に関心を持ち、かつさらにそれを展開して欲しいと考えた場合には、裁判所自身が口頭弁論の続行が必要だと判断します。
控訴裁判所が第1審判決が誤りだという心証を持って場合であっても、その誤りが既に提出されている主張や証拠で明らかであると判断した場合は、口頭弁論の続行は不要と考えます。そういうときは、1回結審で原判決取消の逆転判決になります。そういうことも、稀ではありません。
裁判所が、原判決に疑問を持ち、また当事者の主張立証をさらに求めている場合は、それが解消するまで(宿題を出された当事者が満足な応答をするまで)口頭弁論期日が続行されます。
通常の事件と異なり、複雑困難な問題がある事件では、高裁であっても多数回の口頭弁論が実施されることがあります。私が経験した事件では、東海第二原発原子炉設置許可取消請求控訴事件では東京高裁で16年間、柏崎刈羽原発原子炉設置許可取消請求控訴事件では東京高裁で10年間口頭弁論を続けました。まったくのレアケースですが。
そういう事情なく、当事者が続行を求めた場合は、たいていは拒否されて弁論終結されますし、何とか続行に持ち込んでも1回程度ですし、続行することで結論が変わることはたぶんないと思います。
そのあたりの事情は「控訴審第1回口頭弁論期日」でも説明しています。
司法統計年報で、高裁の控訴事件での口頭弁論実施回数を見ると次のようになります。口頭弁論を実施した事件(口頭弁論を経ないで控訴が却下されたり、控訴状却下された場合や、第1回口頭弁論期日前に控訴の取下や訴えの取下があった場合以外でということです)のうち概ね8割の事件が1回結審されていることがわかります。
年 口頭弁論実施事件数 1回結審事件数 割合 2023 12,293 10,223 83.16% 2022 12,295 10,032 81.59% 2021 10,899 8,801 80.75% 2020 9,309 7,338 78.83% 2019 11,375 8,844 77.75% 2018 11,821 9,229 78.07% 2017 12,583 9,830 78.12% 2016 13,264 10,264 77.38% 2015 14,163 11,019 77.80% 2014 14,047 10,977 78.14%
控訴については「控訴の話(民事裁判)」でも説明しています。
モバイル新館の「控訴(民事裁判)」でも説明しています。
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