◆短くわかる民事裁判◆
控訴審第1回口頭弁論期日
控訴審の第1回口頭弁論期日は、多くの場合、次のように進行されます。
法廷での着席場所は、一方のみが控訴した場合は(第1審で原告だったか被告だったかを問わず)控訴人が傍聴席から見て左側(裁判所から見て右側)、被控訴人(附帯控訴をしていても同じ)が傍聴席から見て右側(裁判所から見て左側)です。双方が控訴した場合については、「双方控訴の場合の当事者の表記」で説明しているように、裁判所の考えにより扱いが変わります。
裁判長が、双方の提出物を確認し、控訴状、控訴理由書、(控訴)答弁書、準備書面等は「陳述」することを確認し、書証については、証拠説明書に「原本」と記載されているものは原本確認をした上で、提出扱いとし、「原審口頭弁論の結果陳述」の手続(陳述とするとか、陳述しますねとか言うだけ)をします。
提出物の方を先にするか、「原審口頭弁論の結果陳述」を先にするか、提出物について主張書面関係を先にして証拠は後にするか、主張書面も証拠もまとめて控訴人側、被控訴人側の順にするかなどは、裁判所の好みによります。
※「原審の口頭弁論の結果陳述」の法的意味については「第1審の口頭弁論の結果陳述の意味」で説明しています。
その後、双方が提出した書面や書証に関して、裁判所側が疑問を持ったりさらに主張や立証を促したいと考えているときは、当事者に対して質問をしたり、裁判所の意向(この点についてさらに主張を補充して欲しいとか、主張を明確にして欲しいとか)が示されます。
その場合は、たいてい、裁判所からの宿題をこなすために次回期日が指定されます。宿題を出された方に、裁判長がどれくらいの準備期間を要しますかと聞きますが、控訴審慣れしていない当事者(代理人弁護士)が第1審の感覚で「1月くらい」とか「通常通り」とかいうと、裁判長から高裁ではそんな悠長な進行はしていない(高裁では「通常通り」などない)とたしなめられ、多くの場合2週間後、せいぜい3週間後くらいには提出すると約束させられます。
裁判所から特に質問等がない場合、裁判長から「双方他に主張立証はないということでよろしいでしょうか」というような確認があります(それさえ言わずに、「では弁論を終結します」と言われることもありますが)。これに対して、ありませんと言うか黙っていると、裁判長がそれでは弁論を終結しますと言って判決言渡期日を指定します。判決期日は、通常、弁論終結期日のほぼ2か月後に指定されます(民事訴訟法第251条第1項が「判決の言渡しは、口頭弁論の終結の日から二月以内にしなければならない。ただし、事件が複雑であるときその他特別の事情があるときは、この限りでない。」とさだめているため)。
ここで、当事者が、相手方の書面に反論したいとか、立証(証人尋問とか文書送付嘱託とか)のための続行を求めると、それが致し方ないと考えられる場合には、期日が続行されることもありますが、多くの場合、それは不要でしょうとか言われます。相手の書面が第1回口頭弁論期日の数日前提出の場合でも、裁判所が反論をして欲しいと思っている場合でなければ(それが相手の主張が取るに足りないと考えているのならいいのですが、どうせ大した反論ができまいと思われている場合もあります)裁判所は続行をかなり渋ります。私の経験・感覚からは無理に続行させてもあまりいいことはなく、反論したいなら相手方の書面が仮に口頭弁論期日数日前提出でも口頭弁論期日までに反論の書面を提出した方がいいと思っています(直前提出は、それ自体また裁判所の不興を買いがちですが)。
そして、大半の事件では、弁論を終結した上で、裁判長が、和解勧告がなされ、右陪席裁判官か左陪席裁判官を受命裁判官に指定し(民事訴訟規則第31条第1項、民事訴訟法第89条)、通常は本日この後和解の話をしたいとして書記官室に来るように言われて閉廷します。
控訴については「控訴の話(民事裁判)」でも説明しています。
モバイル新館の「控訴(民事裁判)」でも説明しています。
**_****_**