◆短くわかる民事裁判◆
二重起訴・再訴禁止
民事訴訟法は、裁判所に係属する事件については、当事者は、さらに訴えを提起することができないと定めています(民事訴訟法第142条)。これを二重起訴の禁止とか重複起訴の禁止と呼んでいます。
この規定自体は、裁判所に係属中(被告に訴状が送達されたときから判決確定まで)に同じ相手に同じ内容の請求をする訴訟を提起することを禁ずるものですが、既に判決が確定した事件と同じ訴えを提起する場合も、同様に、不適法なものとして訴えが却下されることになります。
なお、前の裁判が却下や取下で終了した場合は、その後に改めて同じ内容の訴えを提起することができますが、前の裁判で判決が言い渡された後に取り下げた場合は、再訴が禁止されています(民事訴訟法第262条第2項)。
敗訴して確定した当事者が、実質的に蒸し返す訴えを提起することは、よく見かけますが、その場合に新たな訴えを不適法として却下するかは、裁判官の感覚によりばらつきがあるように思えます。
実質的に蒸し返しであることを重視して細かい違いはかまわず却下する場合もありますし、比較的細かい差異であっても理由とする事実が違うとして二重起訴には当たらないとする場合もあります。私の感覚では、法的な根拠が違う場合(債務不履行を理由とする損害賠償と不法行為を理由とする損害賠償、所有権に基づく明渡請求と賃貸借や使用貸借契約(の終了等)に基づく明渡請求など)は二重起訴には当たらないとされることが多く、原告が請求の基礎(根拠)とする事実に差異があるときは二重起訴に当たるとすることには慎重な裁判官が多数派であるように思えます。
といって、実質的には同じか大差ない請求で過去に原告が敗訴しているのですから、二重起訴を理由とする却下は免れても、結局は請求棄却の判決となるのが大半ですが。
訴えの提起については「民事裁判の始まり」でも説明しています。
モバイル新館の 「第1回口頭弁論まで」でも説明しています。
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