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短くわかる民事裁判◆
3号再審事由:利害対立のある同居人への訴状送達
 再審原告と同居人である義父に対して、貸主から債権譲渡を受けたという者が義父を主債務者、再審原告を連帯保証人として、2003年12月5日に貸金請求訴訟を提起し、2003年12月26日に再審原告宛の訴状と義父宛の訴状がいずれも義父に交付されて送達され、再審原告も義父も第1回口頭弁論期日に欠席して欠席判決が言い渡され、裁判所は被告両名(再審原告と義父)に調書判決の送達を試みたが受送達者不在のため送達できず付郵便送達とし、送達書類はいずれも受送達者不在・保管期間満了で裁判所に返戻され、判決に対する控訴なく2004年3月12日判決が確定したのに対し、再審原告が、再審原告は連帯保証人になっておらず義父が無断で再審原告の印章を持ちだして金銭消費貸借契約書に押印したものであり、義父はそのことを2006年2月28日に至るまで隠していた、確定判決の訴訟に関して義父と再審原告には利害対立があり訴状等が速やかに再審原告に交付することを期待することはできず現に交付されなかったと主張して2006年3月10日に再審請求をしました。
 最高裁2007年3月20日第三小法廷決定は、訴状の補充送達の有効性については、「民訴法106条1項は、就業場所以外の送達をすべき場所において受送達者に出会わないときは、「使用人その他の従業者又は同居者であって、書類の受領について相当のわきまえのあるもの」(以下「同居者等」という。)に書類を交付すれば、受送達者に対する送達の効力が生ずるものとしており、その後、書類が同居者等から受送達者に交付されたか否か、同居者等が上記交付の事実を受送達者に告知したか否かは、送達の効力に影響を及ぼすものではない(最高裁昭和42年(オ)第1017号同45年5月22日第二小法廷判決・裁判集民事99号201頁参照)。したがって、受送達者あての訴訟関係書類の交付を受けた同居者等が、その訴訟において受送達者の相手方当事者又はこれと同視し得る者に当たる場合は別として(民法108条参照)、その訴訟に関して受送達者との間に事実上の利害関係の対立があるにすぎない場合には、当該同居者等に対して上記書類を交付することによって、受送達者に対する送達の効力が生ずるというべきである。そうすると、仮に、抗告人の主張するような事実関係があったとしても、本件訴状等は抗告人に対して有効に送達されたものということができる。」としました。
 その上で「しかし、本件訴状等の送達が補充送達として有効であるからといって、直ちに民訴法338条1項3号の再審事由の存在が否定されることにはならない。同事由の存否は、当事者に保障されるべき手続関与の機会が与えられていたか否かの観点から改めて判断されなければならない。すなわち、受送達者あての訴訟関係書類の交付を受けた同居者等と受送達者との間に、その訴訟に関して事実上の利害関係の対立があるため、同居者等から受送達者に対して訴訟関係書類が速やかに交付されることを期待することができない場合において、実際にもその交付がされなかったときは、受送達者は、その訴訟手続に関与する機会を与えられたことにならないというべきである。そうすると、上記の場合において、当該同居者等から受送達者に対して訴訟関係書類が実際に交付されず、そのため、受送達者が訴訟が提起されていることを知らないまま判決がされたときには、当事者の代理人として訴訟行為をした者が代理権を欠いた場合と別異に扱う理由はないから、民訴法338条1項3号の再審事由があると解するのが相当である。」と一般論を述べ、当該事案については「抗告人の主張によれば、前訴において抗告人に対して連帯保証債務の履行が請求されることになったのは、抗告人の同居者として抗告人あての本件訴状等の交付を受けたAが、Aを主債務者とする債務について、抗告人の氏名及び印章を冒用してBらとの間で連帯保証契約を締結したためであったというのであるから、抗告人の主張するとおりの事実関係が認められるのであれば、前訴に関し、抗告人とその同居者であるAとの間には事実上の利害関係の対立があり、Aが抗告人あての訴訟関係書類を抗告人に交付することを期待することができない場合であったというべきである。したがって、実際に本件訴状等がAから抗告人に交付されず、そのために抗告人が前訴が提起されていることを知らないまま前訴判決がされたのであれば、前訴判決には民訴法338条1項3号の再審事由が認められるというべきである。抗告人の前記3の主張は、抗告人に前訴の手続に関与する機会が与えられないまま前訴判決がされたことに民訴法338条1項3号の再審事由があるというものであるから、抗告人に対する本件訴状等の補充送達が有効であることのみを理由に、抗告人の主張するその余の事実関係について審理することなく、抗告人の主張には理由がないとして本件再審請求を排斥した原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」として原決定を破棄し原裁判所に差し戻しました。

※この判決の射程(適用範囲)に関して、同居夫婦間の離婚の訴状が原被告の子に交付され被告には渡されなかった場合について「3号再審事由:同居夫婦間の離婚訴状の子への送達」で検討しています(裁判所は否定)。

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 再審については「再審請求の話(民事裁判)」でも説明しています。
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