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短くわかる民事裁判◆
5号再審事由:暴力を受け身を隠した者への公示送達
 刑事上罰すべき他人の行為により、自白をするに至ったこと又は判決に影響すべき攻撃若しくは防御の方法を提出することを妨げられたことという5号再審事由による再審請求(再審の訴え)が認容されたケースとして、原告の暴力に怯えて身を隠した被告に対して訴状副本等の公示送達の手続がとられたために被告が訴訟の存在を知らずに判決を受け確定したという事例を紹介します。

 協議離婚して転居した元妻の元を訪れては復縁を迫り断られて暴力を振るい電話で脅迫するなどしていた原告が、元妻の婚約者宅を訪れてその母に暴行を加えて加療2週間の傷害を負わせ、元妻が警察官に相談した上で誰にも行方を知らせずに身をくらませたところ、原告が元妻を被告として離婚無効確認請求の訴えを提起し、訴状副本等が住民票所在地で転居先不明で不送達となり、公示速達の申立てをして、被告欠席のまま原告勝訴の判決が言い渡され確定しました。原告は、被告の婚約者の母に対する傷害罪で略式起訴され罰金10万円に処せられ、その略式命令は確定しました。
 大阪地裁堺支部1985年6月26日判決(判例時報1173号90ページ)は、再審原告は、再審被告の執拗な暴行脅迫、特に婚約者の母に対する犯罪行為により危険が迫ったものと畏怖して身をくらましたため、原訴訟の係属を知らず、自己に有利な主張、立証をする機会を奪われたものであるから、民事訴訟法第420条(現第338条)第1項第5号所定の再審事由があるというべきである、再審原告が所在をくらますに至った直接かつ最大の原因である再審被告による婚約者の母に対する犯罪行為につき有罪の裁判が確定したのであるから本件再審については同条第2項の要件(有罪判決要件)を具備するとして、5号再審事由があると認めました(離婚届に自ら署名押印したこと、離婚届提出を知ってもそのときには何らの異議も述べず法的措置も取らなかったこと、その3か月後に元妻の就職のために保証人となった際続柄を「友人」と記載したことなどを認定した上で、離婚は有効であり、離婚無効確認の請求には理由がないとして、確定判決を取り消し、再審被告の請求を棄却しました)。
※この判決は、教科書等では、「刑事上罰すべき他人の行為」は、当事者本人に対するものに限らず、近親者に対するものでもよいとした裁判例として紹介されることが多いです。

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 再審については「再審請求の話(民事裁判)」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる「再審請求」でも説明しています。

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