◆短くわかる民事裁判◆
6号再審事由認容例:最高裁1994年10月25日第三小法廷判決
判決の証拠となった文書が偽造されたものであったことという6号再審事由による再審請求(再審の訴え)が認容された典型的な事例を紹介します。
原告らは、保有していた被告会社Aの株式合計1万株の1969年10月9日付での被告会社Bへの売却が無効であることを主張して、被告会社Aと被告会社Bに対し、原告らが(被告会社Aの)株主であることの確認を求めて1974年に提訴しました。第1審判決は原告らの請求を認容し、被告らが控訴しましたが、1984年7月20日、控訴が棄却され、被告らの上告に対し1987年11月10日最高裁が上告棄却の判決をして被告らの敗訴判決が確定しました。
確定判決が被告らを敗訴させた理由は、原告らと被告会社B(譲受人)との間の株式譲渡契約(1969年10月9日)当時、原告らに対して被告会社Aが株券を発行していたのに株券が交付されていないので譲渡契約は無効ということでした。
確定判決の敗訴当事者である被告会社Aと被告会社Bが、1990年6月13日、原告らに対して、確定判決の証拠となった株券が偽造であった(より具体的には、確定判決の証拠となった甲第11号証の株券は1968年に印刷された被告会社A発行の株券とされているが、実際には裁判で係争中の1977年11月16日頃にすでに被告会社Aの代表者でなくなっていた原告の1名が勝手に作成した偽造文書であり、1969年10月19日当時株券は発行されていなかった)という6号再審事由を理由として再審の訴えを提起しました。
その再審事由の証拠として、被告会社A名義の株券の印刷を請け負った印刷業者の売上帳(再審甲5号証)とその印刷業者の証言などが提出されました。
原審(仙台高裁2004年1月25日判決)は、再審事由を認め、再審の訴えの請求を認容しました。
最高裁1994年10月25日第三小法廷判決は、再審の補充性(再審事由を知りながら上訴で主張しなかったときは再審請求ができない:民事訴訟法第338条第1項但し書き)についての再審被告ら(確定判決原告ら)の主張を退けた(それについては、「有罪判決に代わるものと控訴・上告対応」で説明しています)上、再審事由等の判断について「原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。」として上告を棄却しました。
※事案の内容については、判例時報の解説記事や上告理由書(判例時報1516号74〜77ページ)により補充しています。
このケースでは、確定判決の結論を直接決した株券の発行の有無という中心的な論点の直接的な証拠である株券が、偽造であったことを、その株券の印刷を請け負った業者の帳簿と証言という直接的な新証拠によって立証したもので、これだけそろえば裁判官も偽造の主張を認め、また再審請求も認めるというお手本のような事例といってよいでしょう。
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