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短くわかる民事裁判◆
再審開始決定確定後の本案の審理
 民事訴訟法第348条第1項は「裁判所は、再審開始の決定が確定した場合には、不服申立ての限度で、本案の審理及び裁判をする。」と定めています。
 この「本案の審理(ほんあんのしんり)」は、再審原告が主張する再審事由ではなく(再審事由があることは再審開始決定の確定で、再審被告も争えなくなっています)、再審請求の対象となっている確定判決で争われていた事件について再度審理して見直すということです。
 本案の審理は、原則として、確定判決の口頭弁論終結時点に戻り、その続きを行うことになります。それまでに提出した主張と証拠はそのまま生きているという扱いになります。

 ただし、再審事由が「法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。」(2号再審事由)であった場合は、その裁判官が行った訴訟行為は取り消されたもの(なかったもの)と扱うことになります。
 また、「法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。」(3号再審事由があった場合は、訴訟行為に必要な授権を欠いたことであれば、その行為を取り消す(なかったものとする)ことで足りるかと思いますが、代理権自体がなかったという場合は、その代理人がした(本人が関与できなかった)すべての訴訟行為がなかったものとする必要がありますので、基本的にはすべての手続をやり直すことになります。この点、3号再審事由(4号上告理由でもあります)については、本人が追認すれば有効となりますが、「無権代理人がした訴訟行為を追認する場合には、ある審級における手続がすでに終了したのちにおいては、その審級における訴訟行為を一体として不可分的にすべきもの」とされ(最高裁1980年9月26日第二小法廷判決)、再審の場合も前訴の訴訟行為の一部だけを追認することは許されないとされています(最高裁1995年11月9日第一小法廷判決)。代理権がない者の訴訟行為を一体として全部追認するとそもそも3号再審事由はないことになり、一部を追認すると主張しても許されず無効扱いされ(最高裁1995年11月9日第一小法廷判決ではそのように扱われています)ますから、結局、すべてやり直さざるを得ないわけです。

 再審開始決定が確定すると、裁判所は口頭弁論期日を指定し(現在だと、弁論準備手続期日にするかも知れませんが)、裁判官が交代していれば(再審事件は再審請求の対象となる判決をした部に配点されるのが通常です。それについては「再審の訴えの受付と事件配点」で説明しています。それでも時の経過により裁判官が交代していることが多いと思います)、弁論更新の手続(通常は、「従前通りと聞いていいですね」と裁判官がいい、当事者が「はい」と答えるか黙っているというだけですが)を行って、従前の続きとして(既に提出・陳述されているものは既にそういう状態にあるとして)審理(準備書面、書証の提出等)を行います。
 あとは通常の裁判同様、当事者の追加の主張、書証提出、さらに追加の人証調べが必要なら人証調べを行うなどして、当事者の主張立証が尽き、判決をすべき段階に至れば弁論を終結して判決ということになります(もちろん和解で終わらせることもありえますが、再審になっている事件では当事者の感情面から難しいだろうと思います)。

 私に再審の相談をしたい方は、「再審メール相談」のページをお読みください。

 再審については「再審請求の話(民事裁判)」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる「再審請求」でも説明しています。

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