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短くわかる民事裁判◆
再審請求棄却決定確定の効力
 再審の事由がないとして再審請求を棄却する決定がなされてその決定が確定した(不服申立てをしなかった、不服申立てをしたが退けられそれ以上不服申立てができない状態となった)場合、「同一の事由を不服の理由として、更に再審の訴えを提起することはできない。」とされています(民事訴訟法第345条第3項)。
 これに反して再度同じ再審事由を主張して再審の訴えを提起した場合(その時点では再審事由がある場合であっても)、再審の訴えは不適法として却下されることになります。

 「同一の事由」は、民事訴訟法第338条第1項各号ごとという趣旨ではなく、例えば6号再審事由で複数の偽造・変造文書がある、7号再審事由で複数の証人が偽証をしている、9号再審事由で複数の主張について判断の遺脱があるといった場合に、請求棄却決定がされた再審の訴えで主張していなかったものは「同一の事由」とはいえず、新たに再審の訴えが可能と考えられます。
 ただし、これについては裁判例も見当たりませんし、学者さんの間では、最初の再審の訴えで知りながら主張しなかった事由は民事訴訟法第338条第1項但し書き(再審の補充性)の類推適用により後の再審の訴えでは主張できないとか、信義則上主張できないというような意見が有力だとか(コンメンタール民事訴訟法Z 74〜75ページ)で、予断を許しません。

 6号再審事由(判決の証拠となった文書等が偽造・変造されたものであった)、7号再審事由(証人または宣誓した当事者の虚偽の陳述が判決の証拠となった)を理由として、特に被疑者の死亡、公訴時効の成立、当事者について過料の裁判を申し立てたが裁判所が職権を発動しない(理由も示さない)とき(この場合にも有罪判決に代わるものの要件を満たすとする裁判例につき「当事者の虚偽の陳述と有罪判決要件」で紹介しています)により有罪判決に代わるものの要件を満たしたと主張して再審の訴えを提起した場合、(再審の訴え却下決定ならば再訴の余地が残りますが)再審請求棄却決定を受けて確定すると、その後に偽造・変造や偽証の有力な証拠を得たとしても、同じ文書の偽造・変造、同じ虚偽の陳述を再審事由とする再度の再審の訴え提起はできなくなります。
 その意味で、十分な証拠がない段階での拙速な再審の訴え提起は、再審開始の可能性を狭め芽を摘むことにもなりかねないことに注意する必要があります。

 このように、再審請求棄却決定が確定すると、同一の事由を理由とする再審の訴えを提起することができなくなりますので、再審の訴えを維持したければ、再審請求棄却決定に対して不服申立てをする必要があるということになります。

 再審請求棄却決定に対する不服申立てについては、「再審請求棄却決定に対する不服申立て」で説明しています。

 私に再審の相談をしたい方は、「再審メール相談」のページをお読みください。

 再審については「再審請求の話(民事裁判)」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる「再審請求」でも説明しています。

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