◆短くわかる民事裁判◆
専門部と集中部
裁判所での事件の配点は機械的に行われますが、特定の種類の事件は、特定の部に配点することになっている場合があります。特定の種類の事件のみを担当する部を「専門部(せんもんぶ)」と呼び、通常事件も取り扱うが、特定の種類の事件はすべてその部に担当させる部を「集中部(しゅうちゅうぶ)」と呼んでいます。専門部は、専門性が高い種類の事件で数が多いものについて大規模庁に設けられます。集中部は専門性が高い種類の事件だけども1つの部をそれに専念させるほどの事件数がないときに設けられます。
東京地裁(本庁)では、労働事件は民事第11部、民事第19部、民事第33部、民事第36部(いずれも専門部)のいずれかに配点されます。他にも建築紛争は民事第22部(専門部:ただし調停・借地非訟・建築専門部)、交通事故の事件(損害賠償)は民事第27部(専門部)、医療過誤事件は民事第14部、民事第34部、民事第35部(いずれも集中部)のいずれか、行政裁判は民事第2部、民事第3部、民事第38部、民事第51部(いずれも専門部)のいずれかに配点されます。知的財産(特許権、著作権等)関係の事件は民事第29部、民事第40部、民事第46部、民事第47部(いずれも専門部)のいずれかに、会社関係訴訟は民事第8部(専門部)に配点されます(これらの事件は、訴状の提出先=民事受付自体、霞ヶ関庁舎ではなくビジネス・コート(中目黒庁舎)ですが)。
私の得意分野の労働事件について全国的に見ると、労働専門部は、東京地裁と大阪地裁(第5民事部)に、労働集中部は、さいたま地裁(第5民事部)、千葉地裁(民事第1部)、横浜地裁(第7民事部)、名古屋地裁(民事第1部)、京都地裁(第6民事部)、神戸地裁(第6民事部)、広島地裁(民事第3部)、福岡地裁(第5民事部)に設けられています。
東京地裁では、労働事件として労働部に配点されるのは、解雇・雇止め、未払い賃金請求事件(残業代請求も含まれます)、労災認定をめぐる訴訟、公務員の免職や懲戒の事件、労働組合に関する訴訟、労働委員会の救済命令をめぐる訴訟などです(より正確・詳細には東弁の機関誌に掲載された東京地裁労働部書記官の説明→こちら:2~3ページ)。ハラスメントの損害賠償請求や、労災についての使用者への損害賠償請求は、労働部ではなく通常部に配点されます。ハラスメントの損害賠償請求を労働部で審理して欲しい場合は、未払い賃金請求も併せて行うなどの工夫が必要になります。
訴えの提起については「民事裁判の始まり」でも説明しています。
モバイル新館の 「訴えの提起(民事裁判の始まり)」でも説明しています。
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