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短くわかる民事裁判◆
保証会社からの請求
 貸金業者から借金をして返済が長らく滞っている場合、貸金業者とは別の「保証会社」が貸金業者に代位弁済(だいいべんさい)」をして、その保証会社から請求や訴訟提起がなされることがあります。
 消費者金融からの借入の場合は、そういった保証会社がつくことは稀ですが、銀行等からの借入の場合、借入時の書類の中に「支払保証委託契約書(しはらいほしょういたくけいやくしょ)」が入っているのがふつうです。借入の時にまとめていろいろ書類を作る中で借主はよくわからないままに、業者にここにも署名押印してと言われるままに署名押印して、保証会社が入っていることもわかっていないということもままあります。そうであっても、契約書に署名押印していれば、裁判所で、知らなかったとか、そんな契約はしていないと主張しても、まず通りません。
 銀行等は、返済が概ね6か月滞ると、保証会社から代位弁済(その時までの借入元本、利息、遅延損害金全額の一括支払い)を受け、以後はその保証会社が借主に対してその支払った額とその後の遅延損害金を請求することになります。
 保証会社は概ね銀行の系列会社ですが、それが消費者金融であることも多く(例えば三菱UFJ銀行にアコム、三井住友銀行にプロミス(SMBCコンシューマーファイナンス)、新生銀行にレイク(新生フィナンシャル)、みずほ銀行にオリコ(オリエント・コーポレーション)など)、借主は銀行に借りていたのにどうして消費者金融が出てくるんだと驚くこともままあります。
 保証会社が訴訟提起するときは、貸金請求ではなく、求償金請求という事件名で提訴するのがふつうです。

 保証会社の請求(求償金)の消滅時効の起算点(きさんてん:開始時期)は、代位弁済の時と解されています(最高裁1985年2月12日第三小法廷判決)。つまり、借り入れた銀行等との取引ではもう時効期間が経過しているのに、保証会社の求償権はまだ時効消滅していないということがふつうに起こります。借主側から見れば、自分が関与しない貸金業者側(多くはグループ会社)の行為で時効成立が遅くなる(時効が成立しなくなる)というのは納得しがたいところですが、法的には保証会社の求償権は貸金とは別の債権で、求償権の発生時期は代位弁済時としか考えられませんし、(実際にはほぼ見てもいないとしても)契約書上借主が保証会社に保証(支払が滞ったときの代位弁済)を求めたということになっているのですから、裁判所がそこで違う判断をすることは期待できません。

 代位弁済した中には元本だけでなくて利息や遅延損害金も含まれているので、その額に遅延損害金をつけるのは2重取り(複利計算)じゃないかと言うと、そこは気が咎めるのか遅延損害金の対象は元本分でいいということもありますが、率直に言って、その額よりももっと大きなところで減額しないと払えないのがふつうですし、そういうことを言っている間に新たに増える遅延損害金の方が多いので、言ってみてもあまり意味がないのが実情です。

 借金の消滅時効については「消滅時効の話」で詳しく説明しています。
 

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