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短くわかる民事裁判◆
借金の消滅時効
 貸金業者からの借金の消滅時効は、基本的には、最終の返済か借入(の遅い方)から5年が経過すると成立(現在の法律用語では「完成」)すると考えていいです。
 時効は、債務者である借主が債務を承認すると更新(2020年4月1日施行の民法改正前は「中断」と呼んでいました)されます(民法第152条)。この債務の承認には、借入金の返済や、支払いの猶予要請(払うけどしばらく待ってくれなどの発言や文書作成)も含まれ、一部の支払でも債務全体を承認したものと扱われます。
 債権者(貸金業者)が借主に対して催告(さいこく:日常用語でいえば支払いの催促)をすると6か月間時効の完成が猶予され(民法第150条)、その結果、最終の返済か借入から5年以内に催告がなされていれば最終の返済か借入から5年の経過と催告から6か月経過の遅い方までに、訴訟提起や差押え等の法的手続が取られると、時効の完成が猶予され、債権者の勝訴判決確定や和解、強制執行手続の終了により更新され、(民法第147条、148条。時効期間の再度の進行開始からまた5年間)成立しなくなります。
 これらの事情(借金の返済や猶予要請、訴訟等の法的手続)がないまま時効期間(最終の返済か借入から5年、その間に催告があればその催告からも6か月)が経過すると時効が成立し、支払い義務がなくなります。
 ただし、時効成立後でも債務者(借主)が債務の承認に当たる行為、借金の一部の返済や返済期限の猶予等の要請や合意をすると、借主が時効の完成を知らずにそうした場合であっても、時効の完成による支払拒否ができなくなると解されています(最高裁1966年4月20日第法廷判決)ので注意が必要です。

 貸金業者が債権管理を怠って時効を完成させることはあまりないですし、借主が貸金業者に求められて時効のことを考えずに一部支払ったり債務を認める文書に言われるままに署名してしまうこともあり、貸金業者からの貸金請求訴訟に対して消滅時効で闘えることはそうあるものではありません。
 しかし、まったくないというわけではなく、また、時効は債務者(借主)が主張(この場合法律用語では「援用(えんよう)」といいます)しないと裁判所が勝手に考慮できないしくみなので、裁判所の方で教えてくれないことが多々あります。そういう事情から、長らく支払っていなかった(特に連絡もなかった)貸金業者から貸金請求訴訟を起こされたときは、消滅時効については、一応検討してみるべきです。

※会社でない貸金業者(例として信用金庫、信用保証協会、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)、日本学生支援機構(旧日本育英会)など)や貸金業者でない個人(知人等)からの借入については、2020年3月末日までの借入は時効期間が10年で、返済等の行為をする度更新されてその後10年となります(2020年4月1日施行の民法改正前の民法旧規定第167条、第147条)。2020年4月1日以降の借入は時効期間が5年になります(民歩第166条)。

 借金の消滅時効については「消滅時効の話」で詳しく説明しています。
 

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