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短くわかる民事裁判◆
訴状の補正:補正依頼書
 訴状が担当部に回り、訴状の記載に問題があると、書記官から連絡があります。訴状の記載について補正を求める文書(補正依頼書:ほせいいらいしょ)の形で送られてくる(弁護士にはふつうはFAXで、弁護士が付いていない場合は郵送で)こともありますし、電話で指摘されることもあります。
 裁判所側が「間違い」と確信していないときは、電話でやりとりして、訂正を要する場合は訂正の約束をし、訂正の必要がないと判断したときはそのまま第1回期日の日程調整に入るということも、よくあります。
 本人訴訟で裁判所が大幅な補正が必要と判断すると、その修正に時間がかかり、何度も繰り返し修正をするということもあります。被告側で見ると、訴え提起の日から数か月も経って訴状と訴状訂正申立書(とか訴えの変更申立書)が送られてくることがあり、そういうケースでは訴状の修正に手間取ったのだなとわかります。

 弁護士が書いた訴状でも、裁判所から補正依頼があることはあります。
 例えば、被告2人が共通の事情で100万円の支払義務を負い、片方が30万円支払ったらもう1人の支払義務は70万円に減るというようなとき、判決主文や訴状の請求の趣旨は、私の司法修習時には、「被告らは、原告に対し、各自金100万円を支払え」と書くように指導されました。「連帯して」というような評価を含む文言は書くべきでないといわれていたのです。しかし、近年は「被告らは、原告に対し、連帯して金100万円を支払え」の方がトレンドのようで、私の同僚に対して裁判所からそういう補正依頼書が来ています。
 毎月支払義務が発生し続ける請求、例えば解雇事件での賃金請求とか賃金切り下げを争う訴訟での未払い賃金請求の場合、「令和○年○月から本判決確定の日まで毎月25日限り金○○円…」という請求の趣旨にするのが通常ですが、この「本判決確定の日まで」を書いていないと、裁判所から修正指示が来ます。これは、民事訴訟法第135条が「将来の給付を求める訴えは、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り、提起することができる。」と定めていることを根拠とするものです。民事訴訟法は将来債権の請求を認めていないわけではなく「あらかじめその請求をする必要がある場合」に限るというだけだから、本件では必要があるという主張を込めて確信を持ってそうしている弁護士もいます。私の場合はそういう確信ではなく、毎月の賃金だけでなく賞与も含めて1つの文で請求すると書き方が複雑になり、しかもそれを提訴の予定がずれると金額や請求時期を書き直すことになり、そういう作業の過程で「本判決確定の日まで」が一部にかからなくなって間違えるとかいう経験があります。
 また、単純なミスで、金額の打ち間違い、日付の間違いもときどきあります。金額で大きなところで間違うと読み直しで違和感がありますが、1万円未満のところで、例えば100円の位と10円の位の数字を入れ替わって打ってしまったようなときは、チェック時に気がつかないことがあります。日付は、基本西暦で考えているものを元号に直しながら書いているうちに、平成や令和は2年間違えることがときどきあり、これがなかなか気がつかない…

 間違いを直すのに、昔は間違ったページを打ち直してきれいにしたものを裁判所に提出して差し替えるということもありましたが、近年はそのやり方はまず認められません。印鑑を持って裁判所に行って正本と副本を手書きで修正するか、訴状訂正申立書を作成する(訴状○ページ○行目の「○○」を「××」と訂正するなどを書き並べる)かのどちらかになります。訴状訂正申立書は、送達が必要な書面になるので、FAXでの提出は許されず、裁判所に正本と副本を提出し、裁判所が訴状とともに被告に送達することになります。

 訴えの提起については「民事裁判の始まり」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる 「第1回口頭弁論まで」でも説明しています。
  

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