◆短くわかる民事裁判◆
建物明渡請求の請求の趣旨
家主が借主に対して賃料滞納を理由として建物明渡を求める場合、通常は、明渡の請求と、未払い賃料及び賃料相当損害金を請求することになります。
賃料(家賃)が月10万円で、2024年8月分の家賃までは支払われているがその後賃料が支払われておらず、賃貸借契約書上特別に違約金の条項がない場合、請求の趣旨は
1.被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の建物を明け渡せ。
2.被告は、原告に対し、令和6年9月1日から別紙物件目録記載の建物の明渡済まで1か月10万円の割合による金員を支払え。
3.訴訟費用は被告の負担とする。
との判決及び仮執行の宣言を求める。
とすることになります。
別紙物件目録は、登記簿の記載に従い、建物は「所在」「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」を記載して特定するのが通例です。1つの建物の一部を賃貸している場合は、その部分が特定できるように記載する必要があります。どのようにして特定するかはその建物の構造、区分、賃貸部分の実情によります。言葉での特定が困難であれば賃貸部分を示した図を添付するなどします。
未払い賃料と賃料相当損害金は、基本的に同額なので、区別せずに未払い(滞納)の初日から明渡済までの分をまとめて記載するのがふつうです。
賃貸借契約で違約金条項を定めて賃料相当損害金の額(割合)を賃料額より高くしているときは、契約解除日の前後で区分して解除日までは賃料、解除日の翌日からは賃料相当損害金を請求することになります。
仮執行宣言は、明渡の成否が微妙なケースではつけられないことが多いですが、滞納が相当期間に及んでいれば、住居の明渡でも仮執行宣言がつけられることもあります。原告としては訴状の請求の趣旨で求めておくことになります。
訴えの提起については「民事裁判の始まり」でも説明しています。
モバイル新館の 「訴えの提起(民事裁判の始まり)」でも説明しています。
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