◆短くわかる民事裁判◆
訴訟委任状:訴訟代理人の権限の範囲
弁護士(簡易裁判所の事件での認定司法書士の場合も同じ)に訴訟を委任した場合、その弁護士が当然にできることは、訴訟委任状に記載された事件についての訴訟上の行為、相手方からの反訴や第三者の訴訟への参加、相手方からの強制執行や仮差押え、仮処分に対して対応すること、その事件に応じた強制執行や仮差押え、仮処分を行うこと、相手方からの弁済の受領です(民事訴訟法第55条第1項)。
他方で、依頼者を代理しての①反訴の提起、②訴えの取下、和解、請求の放棄または認諾、第三者が(独立)当事者参加した場合の訴訟からの脱退、③控訴、上告または上告受理申立て、それらの取下、④手形訴訟、小切手訴訟、少額訴訟についての異議の取下またはそれに対する同意、⑤代理人の選任は、それを明示した委任(民事訴訟法の規定では「特別の委任」)がなければできません(民事訴訟法第55条第2項)。これらの事項は、包括的な委任事項、例えば「本件について私がする一切の行為を代理する権限」のような委任では、できないということです。
私が、訴訟事件を受けるときには、このような訴訟委任状を用いています。
民事訴訟法第55条第2項の「特別の委任」を要する事項がすべて書かれているのがわかりますね。
通常は要らない事項もありますが、一応書いておかないと、いざ必要になったときに困るので、念のために書いているものです。
これは、私が特に工夫したり考えたものではなく、昔、弁護士会の売店で売っていた訴訟委任状用紙の内容をそのまま用いているものです。たぶん、ほとんどの弁護士が同じものを使っていると思います。
控訴、上告とかは期間制限があるので、もちろん、本人の同意というか実際には新たな報酬契約と委任状、費用をもらってから控訴や上告をするのですが、万が一委任状が間に合わなかったら困る(実務上はその場合でも委任状は追完するからといって受理してもらう余地がありますが)ので安心のため入れます。
復代理人の選任は、やはり病気とか怪我で期日に出席できないということになったらとりあえず知り合いの弁護士をピンチヒッターにして出席してもらうということがありうるので、弁護士としては外せません。
訴えの提起については「民事裁判の始まり」でも説明しています。
モバイル新館の 「訴えの提起(民事裁判の始まり)」でも説明しています。
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