◆短くわかる民事裁判◆
訴えの提起
民事裁判は、訴状が裁判所に提出されて始まります。
基本的には、誰でも、誰に対しても、訴えを提起することができます(外交官とか国際機構などを被告としても裁判所が審理判断できないとするなどの例外はありますが)。訴状に自らを原告と記載して、裁判所に提出した(提出するのは代理人でも郵送でもかまいません)人が原告になります。原告が、訴状に被告と記載した人が被告になります。このように、国(裁判所)が主導的に行うのではなく、誰かが訴えを提起しないと始まらないし、誰かが訴えを提起すればそれだけで開始されるのが、民事裁判の大きな特徴です(ただし、訴状の記載があまりにも漠然としていたり趣旨不明で請求が不特定であるとか、法的に請求できないことを請求しているとか、訴え提起手数料を納付しないとかの、訴えが「不適法」な場合には、内容について判断しないままに却下されますし、その訴えが認められるかどうかはその内容や証拠次第で、訴えを提起したからそれが認められるとは限りませんが)。誰でもが訴えを提起することができる(民事裁判という制度を利用することができる)とともに、誰でもが訴えを起こされて被告となるリスクがあるということです。
民事裁判を起こすことは、裁判業界の用語では「訴えの提起」で、略すると「提訴(ていそ)」です。世間では、民事裁判を起こすことを「告訴(こくそ)」という人もいますが、告訴は刑事事件の用語ですし、裁判所に対するものではなく捜査機関(警察、検察)に対して犯罪被害を申告して加害者の処罰を求めることです(刑事裁判を起こすことは、「公判請求(こうはんせいきゅう)」「略式起訴(りゃくしききそ)」「起訴(きそ)」のいずれかです)。民事裁判に「告訴」という言葉を使うことは、法的には誤用ですし、裁判業界の者にとっては強い違和感があります(まぁ、慣れてはいますが)。
簡易裁判所では、訴状の提出によらずに、口頭で訴えを提起できるという民事訴訟法の規定はあります(民事訴訟法第271条)が、実際にはほとんどないといわれています。簡易裁判所では、手書きで書き込める簡易な訴状の書式が用意されていますので、現実にはそれを利用して訴状を作成するのが大半と思われます。
裁判所のサイトで掲載されている簡易裁判所での定型訴状の書式・記載例はこちら
訴えの提起については「民事裁判の始まり」でも説明しています。
モバイル新館の 「訴えの提起(民事裁判の始まり」でも説明しています。
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