◆短くわかる民事裁判◆
和解条項:分割払いと一部免除
原告が請求額から相当程度譲歩して和解し、被告から分割払いで支払を受ける場合に、被告からの支払を確実にしたい(支払について強い圧力をかけたい)とき、次のような条項にすることがあります。
1.被告は、原告に対し、△△として、金○○円の支払い義務があることを認める。
2.被告は、原告に対し、前項の金員を、次のとおり分割して、○○銀行○○支店の原告代理人名義の普通預金口座(口座番号○○)に振り込む方法により支払う。ただし振込手数料は被告の負担とする。
(1) 令和○年○月○日限り○○円
(2) 令和○年×月から令和△年□月まで毎月○日限り○○円ずつ
3.被告が前項の分割金の支払を怠り、その額が××円に達したときは、何らの通知催告を要せず当然に同項の期限の利益を失う。
4.被告が前項により期限の利益を失うことなく被告の支払額が□□円に達したときは、原告は、被告に対し、その余の金員の支払義務を免除する。
原告が、被告が和解金を確実に支払うのであれば相当程度譲歩してもよいが、金額を大きく譲歩しながら支払われないのでは踏んだり蹴ったりだという場合に、被告に請求のほぼ全額の債務を認めさせた上で、実際の支払は、約束通り払う限りはこの金額でいいという和解です。
被告側が、形だけでも原告の請求額のほぼ全額を認めることには抵抗を示すことが多く、現実には判決なら原告が勝てるが、被告の支払能力の関係で譲歩する、その情勢について被告も概ね同じ認識というときにできるかなというところです。
この場合、被告側では、約束通りに払えば相当程度少ない支払で済むが、約束を守らないと大きな額で強制執行を受けることになるので、支払について大きなプレッシャーになります。
原告側では、被告が約束を守らないときには実質的な和解の合意額よりも相当多額で強制執行することになる(まぁ強制執行するに至る場合、実際には取れないという可能性も高いのですが)、その差額が「隠れた違約金」とも言えるので、ふつうは(さらに)遅延損害金までは入れません。被告が飲めば入れてもいいですが、そこまで求めるのは阿漕な気がします。遅延損害金条項を入れるなら、3項は「被告が前項の分割金の支払を怠り、その額が××円に達したときは、何らの通知催告を要せず当然に期限の利益を喪失し、被告は、原告に対し、△△円から既払金を控除した残金及びこれに対する期限の利益を喪失した日の翌日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金を直ちに支払う。」のようになります。
和解については「和解」でも説明しています。
モバイル新館の 「和解」でも説明しています。
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