◆短くわかる民事裁判◆
和解条項:一括払いの基本条項
例えば貸金請求訴訟や過払い金請求訴訟で和解するとき、被告が一括払いで支払う場合の金銭の支払いに関する和解条項は、通常、次のようにします。
1.被告は、原告に対し、△△として、金○○円の支払い義務があることを認める。
2.被告は、原告に対し、前項の金員を、令和○年○月○日限り、○○銀行○○支店の原告代理人名義の普通預金口座(口座番号○○)に振り込む方法により支払う。ただし振込手数料は被告の負担とする。
△△には、貸金請求であれば、「本件借入金債務」とか「本件借受金債務」、「本件金銭消費貸借契約に基づく残債務」、「本件金銭消費貸借取引に基づく残債務」など、過払い金請求であれば、「本件過払い金返還債務」、「本件継続的金銭消費貸借取引に基づく過払い金返還債務」などを入れ、金銭の性質を明示したくなければ単に「本件解決金」とします。
上の例の1項と2項を一体として、「被告は、原告に対し、△△として、金○○円の支払い義務があることを認め、令和○年○月○日限り、○○銀行○○支店の原告代理人名義の普通預金口座(口座番号○○)に振り込む方法により支払う。」というようにしてもかまわないのですが、確認条項(上の例の1項)と給付条項(上の例の2項)は別立てにしたいというのが、書記官の通常の思考です。
振込手数料が支払い義務者の負担であることは民法第485条から当然で書かなくても同じなのですが、疑義を残さないように書いておくのが通例です。
原告に代理人(弁護士)がついているときは被告からの支払金は代理人口座に入金させるのが通例です。代理人としては被告が期日どおりに支払ってこないとき、自分の口座ならすぐ確認して対応できますが、原告本人の口座だとそれもわかりませんし、いずれにしても被告から支払があれば弁護士報酬が発生するのがふつうなので被告からの支払金から弁護士費用(報酬金と、実費預かり金に不足があればそれも)を差し引いて依頼者に送金するのが合理的だと、弁護士は考えます。法テラス利用の場合は、法テラスからそれを義務づけられています。ごく稀に(私の経験上は1%いるかいないかです)、それに難色を示す依頼者もいます。その時は、弁護士にとっては、報酬金を踏み倒す気だなと警戒心が走ります。
和解については「和解」でも説明しています。
モバイル新館の 「和解」でも説明しています。
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