たぶん週1エッセイ◆
東京から脱原発を
(ダイジェスト版)
 衆議院選挙の情勢報道では自民党の地滑り的勝利・単独過半数の見込みが報じられ、安倍自民党総裁ははや首相就任を確信してオバマ大統領に会談を申し入れたと報道されています。
 国民の多くが福島原発震災と大量の放射性物質漏洩・拡散・被曝を目の当たりにし、今も故郷に帰れない(おそらくは一生帰れない)原発事故被災者たちの惨状に胸を痛め、さらには原発がなくても停電は起こらない事実と原発再稼働のためなら電力が足りないなどと平気で嘘をつく電力会社のやり口を見聞きして、脱原発を希望しているのに、このような投票行動が予測されていることは、私には驚きですし、とても残念です。
 しかし、嘆いていても仕方ありませんし、諦めれば明るい未来は開けません。こういう情勢の中で東京都民の一人として、それでも東京から脱原発・原発の再稼働阻止が実現できるかを考えてみたいと思います。

東京都が持つ権限とアドバンテージ
 東京都は原発自体の許認可権限を持っているわけでもなく、また原発の立地地域でもありません。しかし、東京電力は東京都に本社を置き東京都内でさまざまな活動をしている会社で、東京電力の売る電気の消費者は東京都に集中しています。東京都が本気になったら、現在の法律を利用したり、新たに都条例を制定することで、東京電力に対して原発の再稼働をめぐって何らかの影響力を行使できるはずです。
 東京都は東京電力の持ち株数3位の株主ですし、東京電力に職員を多数天下りさせてきました。その結果、東京都は東京電力に対していろいろなルートでその意思決定に対して影響力を行使できる地位にあります。
 東京都が法的な権限を行使し、あるいは株主としてや派遣している幹部を通じて東京電力に対する影響力を行使すれば、東京電力を変えていくことも不可能ではないはずです。

不可能を可能に変えた経験から
 私は松本サリン事件被害者弁護団の団長として、地下鉄サリン事件被害対策弁護団の宇都宮健児団長、高橋シズヱさんら被害者、阿部三郎破産管財人らとともにオウム犯罪被害者の救済立法に取り組んだことがあります。オウム犯罪の被害者たち、特にサリン事件の被害者は理不尽な被害にあいながら、国の債権回収を優先させようとする官僚の姿勢やオウム真理教の資産隠し等のために被害救済が絶望的な状況にありました。この状況の中で、私たちは通常の手続で救済されないなら特別立法をすべきであると、官僚からの強い拒絶と抵抗をかいくぐり、地道に国会議員らへの説得活動を続け、当時の自民党政権の下で、オウム犯罪被害者救済のため3回にわたり特別立法を実現しました(自民党政権でも、個人の救済立法に強く反対した官僚を押し切って実現できたのです)。運動を始めた頃には世論の支持もあまりなく内容的にもまったく前例のないもので、実現の展望はないといってよかったのですが、いつも自ら率先して愚直に活動を進める宇都宮健児さんから諦めたらそれまでだと励まされて、被害者側は宇都宮健児さんの柔らかくも手堅いリーダーシップの下で諦めずに結束して長い運動を続け、ついには特別立法の実現に至ったのです(しかも、絶望的状況→特別立法運動→特別立法実現→別の事情による絶望的状況→特別立法運動→特別立法実現→また別の事情による絶望的状況→特別立法運動→特別立法実現と繰り返したのです)。
 私は、そういう経験からも、どんな状況でも自分で諦めてはいけない、もちろん、何でも勝てるわけではないけれども、こちらに正義があれば、そして通常の世間の人が共感してくれるテーマであれば、不可能を可能にすることもできるのだと学びました。

今、諦めずにがんばりましょう
 今、脱原発をめぐる状況は、私たちの運動で特別立法ができた時のオウム被害者の状況と比べて、問題への世間の認知・理解度、脱原発を求める人々の圧倒的な多さを考えれば、相当有利なはずです。私は、被害者側の粘り強く諦めない運動でオウム被害者救済特別立法を実現したときの経験から考えても、今、東京から脱原発を実現していくことは、可能であり、諦めてはいけないと思っています。

東京都民にはできることがあるはず
 はじめに書いたように、東京都がその気になれば、東京電力に対してできることは相当あると思います。知事が替わる今、東京都民には、新しい知事を選ぶという点でも、就任した後の知事に影響を与えるという点でも、できること、創意工夫することはたくさんあるはずです。
 みんなの創意工夫で東京から脱原発を実現していきましょう。

(2012.12.8記)

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