たぶん週1エッセイ◆
東京電力はどこまで嘘つきなのか2/嘘の上塗り

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 東京電力はどこまで嘘つきなのか/国会事故調調査妨害事件の内容が2013年2月7日の朝日新聞朝刊1面トップ記事として掲載され、田中三彦元国会事故調委員と私が記者会見を行い、各社が大きく報道すると、東京電力は、「誤った」説明であったことは認めたものの、「当社の説明者が建屋カバー設置後に撮影された動画について、設置前に撮影された動画と誤認していた」とか、「何らかの意図を持って虚偽の報告をしたわけではない」などの釈明の談話を出しました。その上、東京電力は2013年2月7日のうちに「平成25年2月7日付朝日新聞1、2面『東電、国会事故調に虚偽』について」という文書を発表し、そこでは「その中で、現場の明るさについてご質問があり、『建屋カバー設置後の映像』を『建屋カバー設置前の映像』と誤認してご説明したことは事実」などと、まるで玉井企画部部長が私たちから質問されてそれに対して初めて建屋の中が暗いと説明したかのような虚偽の記載をし、さらに嘘の上塗りをしていました(下で紹介していますが、その部分は2013年2月11日になって誤りを認め訂正しました)。
 この点について、少し詳しく説明します。

東京電力の説明の経緯と目的
 玉井企画部部長が虚偽説明をした2012年2月28日の説明は、3月6日に福島原発の現地調査を行う(前日の5日は福島第二原発の現地調査)ことが予定され、私たち国会事故調の第1ワーキンググループは1号機原子炉建屋4階を調査したいと申し入れ、東京電力側は5号機を調査対象として提案して、調査対象について交渉中の状態で、東京電力側が現地調査に関して説明をしたいということでなされたものです。
 そして、東京電力の説明者の玉井企画部部長は、冒頭に、国会事故調から1号機の原子炉建屋に入りたいという希望を聞いているが、「どれくらい行くのが大変なのかというのを聞いてご判断いただけるという話でしたので、まずご説明をしたいと思います。」と述べて、説明を始めました。つまり、この説明自体、1号機の原子炉建屋の調査がいかに大変かを説明して国会事故調を思いとどまらせることを目的とするものだったわけです。

「今は真っ暗」発言は、説明冒頭の計画的発言
 その上で、玉井企画部部長は、持参したビデオ(東京電力の作業員が2011年10月18日に1号機原子炉建屋4階に入ったときのビデオ)の内容と作業員の進んだコースを説明しました。そのビデオの上映を始めるとき、玉井企画部部長は、次のように述べました。私たちはその前には何一つ質問などしておらず、玉井企画部部長が、積極的に話したことです。

玉井:「まず、この昨年10月に入ったときは、えーと、建屋のカバーがついておりませんでしたので、えーと、これ見ていただくとですね、4階まで行くと、あの、上からですね、明かりが差してます。で、外が、どうも晴れてた様子です。なんですが、今は、建屋カバーがかかっていて、えー、照明がついておりませんので、えーと、原子炉建屋、電源復旧していませんから、建屋としてはですね、あのー、真っ暗だということをご了解いただきたいと思います。はい。」
伊東:「真っ暗」
玉井:「はい」
田中:「あれ、透明じゃないんですか。少しは。光を通さないんですか。」
玉井:「ええ、あの、真っ暗だそうです。それで、あ、すいません。私はですね、あの、今日ご説明させていただきますが、あ、当時入った人間と、それから福島第一の方からですね、少しあの今日ご説明できるだけの話は伺って来て参っているつもりでございまして、まあ、あの、ご質問等に答えられないところもあるかもしれませんが、まあちょっとそこはあの進めさせて、持ち帰らせていただくか、そういうことでご容赦いただきたい」

 この説明の中で、玉井企画部部長は、実質的な説明の冒頭で、積極的に、このビデオでは明かりが差しているが、それは建屋カバーがついていなかったからで、今は建屋カバーがついているので真っ暗だという虚偽説明をしています。この話の流れからして、このことは玉井企画部部長がこの日の説明で一番言いたかったことだったと理解できます。
 しかも、この説明の直後に、玉井企画部部長は、今日の説明のために福島第一の現場の人から話を聞いてきているとも述べています。玉井企画部部長が、実質的な説明の冒頭で述べた、今は建屋内が「真っ暗」かどうかについても、当然福島第一の現場に確認しているはずです。私たちはこの話の流れから、当然、そのように理解しました。
 つまり、説明の流れからしても、玉井企画部部長は、国会事故調を説得して1号機の現地調査を思いとどまらせる目的で説明をしたこと、建屋内が今は真っ暗ということがその説明で玉井企画部部長が積極的に言いたかったことであること、玉井企画部部長は私たちへの説明に先立って福島第一の現場の人に事実関係を確認していることがわかります。そうすると、玉井企画部長が「今は真っ暗」かどうかについて誤認していたということは考えにくいことですし、少なくとも国会事故調の1号機原子炉建屋4階の現地調査を思いとどまらせるという意図を持って説明したことは明らかです。

「ご質問があり」と経緯を歪曲する東京電力
 東京電力が2013年2月7日に発表した文書の「その中で、現場の明るさについてご質問があり」という下りはまったくの嘘です。
 些細なことのようですが、東京電力の言い方だと、まるで私たちが予期せぬ質問をしたがために、それにとっさに誤って答えたかのようなニュアンスを与えます。玉井企画部部長の「真っ暗」虚偽説明は、玉井企画部部長が、説明の冒頭に自ら用意してきたもので計画的なものです。これを、質問されたからその場の判断で答えたかのように言いくるめようとする文書を出す東京電力は、確信犯的な嘘つきと、私には思えます。
 このように「まったくの嘘」「確信犯的な嘘つき」と書いていたら、朝日新聞の2月10日朝刊1面記事で追及されたためか、この点だけは、東京電力が2月11日なって、下のようにお詫び・訂正を出しています。
<東京電力のお詫びの引用>
 (お詫び)
平成25年2月7日に掲載した当社の見解の中で、「その中で、現場の明るさについてご質問があり」としておりましたが、その後、事実関係を確認した結果、 当社側からご説明している事がわかりましたので、訂正させていただきました。大変申し訳ございませんでした。(平成25年2月11日)


 他の点も、きちんと「事実関係を確認」して欲しいですけどね。

玉井企画部部長が「今は真っ暗」と判断した根拠を説明できない東京電力
 ところで、東京電力の釈明では、玉井企画部部長が「建屋カバー設置後の映像を建屋カバー設置前の映像と誤認した」とされていますが、仮にそうだとしても建屋カバー設置後は「真っ暗」かどうかはこのビデオ映像からは判断ができません(このビデオ映像でわかるのはこのビデオ映像が明るいということだけで、建屋カバーがビデオ撮影後に設置されたなら設置後の明るさはこのビデオから判断できるはずがない)。今は真っ暗かどうかは、ビデオとは別に判断するか情報をとる必要があります。東京電力の釈明は、それでは玉井企画部部長がなぜ「今は真っ暗」と「誤認」したのかの説明がすっぽり抜け落ちています。
 2013年2月8日の午後5時30分過ぎから行われた東京電力の定例記者会見でも、3度にわたり、記者から、玉井企画部部長が建屋カバー設置後は「真っ暗」と判断した根拠について質問がありましたが、東京電力側は、ビデオの撮影時期と建屋カバー設置時期の誤認を繰り返し、記者からそこじゃなくて真っ暗と判断した根拠を聞いていると突っ込まれて、「玉井がそう考えた経緯・背景についてはこれから慎重に調査していく」と答えを避け続けました。「建屋カバー設置後の映像を建屋カバー設置前の映像と誤認した」ことだけは玉井企画部部長から聞いているが、それ以外は聞いていないということのようです。とても本当のこととは思えませんが、東京電力広報部というところは、そういう状態で「『建屋カバー設置後の映像』を『建屋カバー設置前の映像』と誤認してご説明したことは事実」とかいう文書を作成して公表するところのようです。いずれにしても、東京電力は、事件の発覚から丸一日半が過ぎても玉井企画部部長が何を根拠に、建屋カバー設置後の今は真っ暗と判断したのかについては、何一つ答えられないのです。
 そもそも建屋カバーは光を通す素材で作られています。それはオペフロ(原子炉建屋5階)での作業のために「昼間でも真っ暗」にしないためです。そして建屋カバー内には照明も設けられました。これはオペフロでの作業のために「夜は真っ暗」にしないためです。つまり、東京電力は、オペフロが真っ暗にならないように建屋カバーを設計企画したのです。ですから、東京電力の人間、少なくとも建屋カバーについて知っている人には、建屋カバーが作られたから「今は真っ暗」というアイディアは絶対に出て来ません。建屋カバーができたから「今は真っ暗」という考えは意図的に騙そうと思うのでなければ出て来ようがないのです。そして、東京電力が、「今は真っ暗」と伝えて意味があるのは、私たち国会事故調だけといってよいでしょう。従って、「今は真っ暗」というアイディアは、国会事故調を騙したい誰かが考えたことというほかありません。少なくとも、玉井企画部部長か、そうでなければそれ以外の国会事故調を騙したいと考えた誰かが、このアイディアを考えついたと考えるのが自然です。
 玉井企画部部長は、「真っ暗だそうです」と、そのすぐ後の福島第一の方から話を聞いてきたという説明とあわせて、福島第一の現場の人から聞いたという答えをしています。福島第一の現場の人が1号機の原子炉建屋が「真っ暗」かどうか「間違える」はずはありません(上で説明した、そもそも「真っ暗」にならないように透光性の素材を選び照明までつけているのです)から、玉井企画部部長が福島第一の現場の人に、「今は真っ暗」かどうかを聞いたら、「真っ暗じゃない」「明るい」という答えが返ってきたはずです(もし本当に聞いたなら、現場の人には驚かれたでしょうね。何をバカなことを言ってるんだと)。仮に東京電力の釈明通りに玉井企画部部長が「誤認」していたならば、少なくとも福島第一の現場の人に聞いたということが嘘になります。また、そうであれば、誰か他の人が玉井企画部部長に嘘を吹き込んだということになります。嘘の話というのは、どこかでほころびを生じるものです。

照明問題も説明できない東京電力
 また、1号機建屋カバーの屋根には照明がついていて、2011年10月28日から使用可能な状態でしたが、玉井企画部部長は、「照明がついておりません」と虚偽の説明をしています。上で説明したとおり、これも私たちが質問したことではなく、玉井企画部部長が積極的に虚偽の説明をしたものです。
 東京電力の2013年2月7日の釈明文書では、この照明問題にはまったく触れていません。2013年2月8日の定例記者会見でも記者からこの点についてなぜ触れないのかと聞かれても、何故ということは把握していないというだけで、やはり玉井企画部部長が照明についてどのような認識だったのか、そう認識した根拠については何も答えられませんでした。

この問題で広瀬社長まで嘘の上塗り→東京電力はどこまで嘘つきなのか3/社長もでたらめ答弁

(2013年2月8日記、同日更新、2月9日更新、2月11日更新)

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