◆自己破産の話◆
まず大事なのは本当に立ち直る決意
信用情報機関へのブラック情報の登録について
家族には、内緒にするのではなく、話して理解してもらいましょう
破産すると決めたら借金は絶対にしてはいけません
裁判所や弁護士に嘘をついたり隠し事をしないでください
破産の手続を行うことによって、弁護士がついて弁護士からの通知書が届いた段階で通常の貸金業者からの取り立てはとまり、破産手続が終わって免責の決定が出た段階で破産手続開始決定のときまでにあった債務(借金)については法律上も支払義務がなくなります。
しかし、破産の手続開始申立に至った人にとって、最も重要なことは、目先の取り立ての停止や債務がなくなることではなく、今後は借金をせずに堅実な生活をして立ち直ることです。それができないのであれば、破産の手続をとっても結局また借金を増やして、今度は破産による救済もできないというさらに困った事態になるだけです。
仕事がなく収入がない人は生業で収入を得る努力をすべきですし、それができないのなら速やかに生活保護の手続をとるべきです。
今後は、仮に貸金業者が貸してくれると言っても絶対に借金はしないで自分の収入の範囲だけで堅実に生きていくという決意をしている人でなければ、破産をしても立ち直れません。
ときおり、破産手続開始決定で信用情報機関にブラック情報が登録されたあとどれくらいたったらローンを組めるようになるのかという質問をする人がいます。
信用情報機関は、もともと業者団体が任意に設立したもので法律上の制度ではありませんでした。しかし、2010年6月の改正貸金業法の全面施行で貸付の総量規制(すべての貸主の貸付額の合計額の上限が設けられた)が行われることになり、法律の実施のために信用情報機関が必要となりました。そのため、ただの業者団体だった信用情報機関が法的な位置づけを得るとともに、行政から監督を受けることになりました。結局、貸金業者団体が作っていた信用情報機関は、株式会社日本信用情報機構(JICC)と株式会社シー・アイ・シー(CIC)の2社に統合され、登録情報が整理され(完済後の過払い請求を意味していた「契約見直し」の登録が2010年4月19日から廃止され、抹消されるなど)、登録期間も短縮方向で整理されました。
その結果、従来は破産の情報は、その団体ごとに手続開始から10年間とか7年間登録され続ける扱いでしたが、現在ではいずれの信用情報機関でも登録期間は5年間になっています。
信用情報機関にブラック情報が登録されていたら貸してはいけないと決められているわけではありませんので、まともな業者でも、しっかりとした保証人がいれば貸してくれることもあります。
しかし、破産を申し立てる段階から次の借金のことを気にするようでは破産をしても立ち直れるはずがありません。
また、家族には内緒にしたいという人も、ときおりいます。
破産手続開始申立に至る人は、ほとんどの場合、経済感覚がおかしくなっています。その経済感覚を、自分の収入の範囲で生活するというまともな経済感覚にする作業が一人でできるでしょうか。一人でできるような人なら破産手続開始申立になるほど深刻化する前に立ち直っているはずだと思います。
また、破産手続開始申立に至る人は、たいていの場合既に家族・親族にかなりの迷惑をかけています。今後は迷惑をかけないためにも真剣に反省して生活態度をなおしてもらう必要があります。
真剣に反省していれば、家族には内緒にしたい、恥ずかしいという感覚は持たないのが通常だと思います。
破産を決意した以上、そのあとに借金をする行為は詐欺に当たり犯罪になります。弁護士に破産の依頼をした以上、絶対に貸金業者から借金をしないでください。
弁護士からの通知や相当程度の支払いの遅れがあれば信用情報機関にブラック情報が登録されますのでまともな貸金業者は金を貸しませんが、逆にブラック情報が登録されている人にターゲットを絞って金を貸す闇金融業者がいます。これらの業者は、信用情報機関のブラック情報や破産手続開始決定(官報には掲載されます)を見たり、さらには全く手当たり次第にダイレクトメールや、電話勧誘で、金を貸す、「誰でもOK」「審査済み〇〇万円までOK」などと言って来ることもあります(最近は破産公告でDMを送ってくるケースはかなり減りましたけど)が、まず間違いなく10日で4割とか5割のとてつもない高金利を請求して、自宅や勤務先、親族のところへ電話をかけたり押し掛けたりして取り立てをする連中です。こういう連中は金を貸してはくれますが、あとで大変な思いをすることになりますし、なによりも相手が誰であれ(仮にまともな業者であれ)破産手続の最中からもう次の借金をするようでは、立ち直れるはずがありません。
また、破産・免責についてかなり寛大になっている最近の東京地裁でも、破産手続開始後の新たな借入については厳しい態度をとっていることから、免責が出ずに破産手続開始申立の意味がなく元の木阿弥ということにもなりかねません。
この期に及んでまだ借金をしたいと考えるのであれば破産手続はあきらめてください。
破産手続での基本的な態度は、弁護士や裁判所に対してうそを言わない、聞かれたことについて隠し事をしない、ずるいことは考えないということです。
資産の一部を隠そうなどということは、免責不許可理由になりますし、犯罪にもなりかねませんので、絶対にやめてください。
一部の貸金業者から自分のところは弁護士に言うなと言われたり、知人などの一部の債権者を除外して手続をしたいという人もたまにいます。しかし、破産手続ではすべての債権者を平等に扱うのが原則で、わざと一部の債権者を除外した債権者一覧表を提出すること自体が免責不許可理由となることもあり得ますし、いずれにしても一部債務を残したままで立ち直ることは極めて困難です。何よりも、この期に及んでなお弁護士や裁判所にうそを言ったり、何かずるいことをしようとすること自体が、問題です。
破産の運用がかなり寛大になってきている最近の東京地裁でも弁護士や裁判所に嘘をついた申立人に対しては厳しい態度をとっています。
**_****_**