庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

    ◆私に相談・事件依頼をしたい方へ
  電話で相談内容を聞くわけ 

 私は、相談を希望される方から電話をいただいた場合、まず電話でだいたいどんな相談かを聞いています。
 「私に電話する前にお願い」で私が電話を受けたときの対応を書いていて、電話でもう答えてしまうこともあると書いていますが、ここでは事務所に来ていただいて相談する場合でも、予め電話でお聞きしたいということについて説明します。
 相談のときには、関係する書類が重要な意味を持つことがよくあります。民事の相談の多くは何らかの約束(契約)に関するものです。その場合、契約書があるのなら、その現物を見ることが大変重要です。ところが、相談の場面で契約書が話題になると「ああ、うちにおいてきました」という相談者の方が少なくありません。あらかじめ電話でどういう相談かを聞けば、その場で、そういうことならこういう契約書はありませんかと確認して、相談のときには持ってきてくださいねと言えます。契約書でなくても土地や建物の相談なら登記簿謄本、相続の相談なら戸籍謄本などできるだけ用意して欲しい書類があります。労働事件の相談なら、多くの場合はどういう労働条件で働く約束だったのかが問題となりますので、労働契約書(雇用契約書、労働条件通知書、雇い入れ通知書など)があれば持ってきて欲しいですし、それがない場合、電子メールや募集広告などで示された労働条件とかがわかれば知りたいですし、そういうものさえない場合意外に給与明細でいろいろなことがわかることもあります。
 それから、相談がどれくらい急ぐものかも確認したいのです。例えば訪問販売で意に沿わない契約をしてしまったので解除したいなどという相談は、契約から8日以内ならクーリング・オフによって無条件で解除できます。裁判所から「支払督促」が来たという相談なら受け取ってから2週間以内に異議を出す必要があります。こういう短期間の期間制限のある相談ならすぐに相談を入れなければその後の対応が大変難しくなってしまいます。また、消滅時効の問題もあります。例えば消費者金融に対する過払い金請求だと、最終取引(最後の借入や返済)から10年たつと時効になってしまいますし、一旦完済して長期間貸し借りがなくその後借金を再開したケースでは完済から10年で完済前の過払い金が請求できなくなることがよくあります。残業代請求などの未払賃金請求では消滅時効は2年(支給日が2020年4月以降の賃金は、「当面3年(法律の条文は5年ですが、経過措置により現実には3年)」になりましたが、それ以前の賃金の時効が遡って3年になったわけではありません)ですので、毎月給料日が過ぎる度に2年前の残業代・未払賃金が時効にかかっていきます。こういうケースも相談を急ぐ必要があるということになります。
 そして相談にどれくらい時間がかかりそうかの見当もつけたいのです。予約した時間のあとどこまで時間を空けておくか。弁護士にとっては非常に重要です。そのためどれくらい複雑な話なのか、相談者の方の希望(どうしたいのか)がはっきり決まっているのか、問題について相談者の方がどれくらい整理できているのかを内容を少し話してもらうことである程度見当をつけたいのです。
 弁護士は、すべての法律を記憶しているわけではありませんから、特殊な法律が問題になりそうなら、あらかじめ少しは見ておこうという気持ちもあります。
 そういう事情で、私は、相談の申し込みがあった場合は、電話でだいたいどんな相談かをお聞きしています。電話では一切話せないという方も稀にいますが、そういう場合は、原則としてお断りしています。

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