庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

私に相談・事件依頼をしたい方へ
電話+面談が一番いいと考えるわけ
ここがポイント
 法律相談では、やりとりをすることで事実関係がわかり相談者が気づかぬ重要事実が出て来たりして、相談も回答もレベルが上がっていく。
 メールや手紙、FAXでの質問にそのまま答えるだけでは、相談というよりは一般的な法律知識の伝達にとどまる。雑誌等で「法律相談」と名付けてやっていることはそのレベル。
 よい相談は相談者と弁護士の共同作業
 だから、法律相談は電話+面談がベスト
 

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法律相談の結果は具体的事実関係によって変わってきます
 法律相談では、一般的な法律知識を話すだけではありません。それぞれの相談者の方の事情を聞いて、その事情にあわせて、相談者の方の希望する解決に近づく方法を検討します。相談者本人から具体的に事情を聞かせてもらわないと、ほとんどの場合、適切な回答はできません。そのためには、弁護士が相談者に事実関係を質問したり確認する必要があり、弁護士と相談者のやりとりが必要になります。
 そして、たいていの法的な紛争では、何らかの書類(契約書等)が作られていたりやりとりされていて、事実関係を把握するのに有用だったり、書類が重要な証拠となることが多々あります。
 そうすると、法律相談で相談者の具体的な事実関係に基づいて適切な回答をする/適切な解決方法を見つけ出していくためには、弁護士と相談者が相当程度やりとりをする必要があり、関係する書類等を見るということも考えればやはり直接面談することが一番よく、面談が難しい場合でも少なくとも電話で話をすることが適切だということになります。
 なお、コロナ禍の下でZoom等のWeb会議の利用が広まっていますが、私は、嫌いですので、現在のところ、導入していません。
「相続分」の場合で少し具体的に説明すると…
 電子メールや手紙、FAXなどで「法律相談」を申し込まれても、その質問にすぐに回答するということは、かなり難しいということになりますし、一見回答できそうなことでも、それは本来の意味での法律相談として適切な回答にならないことが多いと思います。
 例えば、「最近、夫が亡くなりました。私と夫との間には子どもが2人います。夫には姉がいます。私の相続分はどれだけでしょう。」というような電子メール(郵便、FAXでも同じです)での問い合わせが来たとします(もちろん、架空の事例ですし、今時ここまで初歩的な質問はまれですが、電子メールでの問い合わせのほとんどは、抽象的な度合いとしてこの程度です)。
 もし、この人が、単なる知的好奇心で民法の入門レベルの知識を求めているのであれば、「相続人は妻と子ですから妻の法定相続分は(子どもの人数に関係なく)2分の1です」と答えればいいでしょう。
 しかし、実際に相続問題に直面した当事者が弁護士に聞いている以上、聞いている方は、現実的に自分が相続財産のうちどれだけをもらえるかと思って聞いているはずです。ですから、表面的には法定相続分を聞いているとしても、それだけを答えても結果的には誤解を生じる可能性が高いのです。
 この場合、実務的に言えば、まず死んだ夫が遺言書を残しているかどうかで話は全く違ってきます。遺言書があれば、そちらが優先し、法定相続分がいくらでも関係ありません。遺言書で別の人に全財産を相続させるとか譲るとか書かれていれば、相続分があってもその分を相続することはできません。配偶者や子の場合は法定相続分の半分を「遺留分」として後から取り戻す権利はありますが。
 また、遺言書で財産について直接これは誰、これは誰と指定する以外に、相続分を指定することもできます。この場合は、やはり、法定相続分とは違う割合で分けることになります。
 遺言書がない場合は、法定相続分が生きてきますが、これもこの場合必ず2分の1というわけではありません。例えば、亡くなった人が生きている間に相続人の誰かが生計のためにまとまったお金をもらっていたり(特別受益:とくべつじゅえき)、相続人の誰かが相続財産の維持のために特別に貢献していたり(寄与分:きよぶん)すると、相続分が修正されます。子どもたちが相続放棄をしたら、相続人は親がいなければ(この相談では親が生きているかどうかはっきりしませんね)妻と姉になりますから、その場合は妻の法定相続分は4分の3になります。
 さらに、実務的には、実際の遺産分割では法定相続分に従う必要がないことが重要です。相続人が協議して遺産の具体的な分配を決めて合意すれば、その結果が法定相続分と違ってもかまいません。法定相続分といっても遺産分割協議では強制力はありません。多くの相談者は、この話で驚きます。法定相続分は、遺産分割協議や調停の際の主張の理論的根拠にはなりますし、最終的に家庭裁判所が具体的な遺産分割を決めてしまう「審判」に持ち込まれれば原則として分割の基準とされますが、相続人が違う合意をすることは自由です。
 ですから、そもそも法定相続分自体、遺言があれば(遺留分の計算の元にはなりますが)意味がなく、遺言がない場合でも、最後までがんばれば裁判所がそれによって分割することになるのだからそれに近い線で合意すべきだと主張して戦う根拠になるに過ぎないのです。
 相続分の話だけでも、当然にこの程度のことは考えなければなりませんし、より特殊なケースはいろいろ考えられます。相続以外の問題でも、法律には、一般の人が想定しているのと違う部分や条件によって結果が異なってきたり曖昧な部分が、結構あるのです。
法律相談で弁護士がふつうに考えること
 弁護士は、法律相談の時には、相談者がはじめに話したことだけでなくいろいろと関係のあることを質問して事実関係を把握し、相談者が最終的には何を知りたいのか、何を希望しているのかを探りながら回答しています。もちろん、面談しても相談者の真意をつかみそこねることはありますが、少しでも相談者の真意と希望にそうように努力しています。
 電子メールや郵便、FAXでの相談だと、それがなかなかできません。相談者が最初に書いてくることだけではわからないことが多すぎます。そして、上のような相談例で、弁護士が様々な場合分けをして、この場合はこう、この場合ならこうというように回答するのは、とんでもなく労力がかかります。数行の質問をする方は(気持ちとしてはいろいろ悩んだ末書いているのでしょうけど、労力的には)簡単ですが、それに答える方は、まじめに答えようとするととてもたいへんなのです。そんなことをまじめにやるとすれば、面談の法律相談の何倍かの料金をもらわないと割が合いません。
(また、質問の文章が長ければいいかというと、長い割りに弁護士が知りたいことが書かれていないことが少なくありません。読むのに苦労して、結局、わからないということになりがちです。)
よい法律相談は相談者と弁護士の共同作業
 ここまでは、相談者の相談に対して法的に「正しい」回答をするために、具体的な事実関係について弁護士が質問して把握していく必要があるということを説明しました。次はもう1つ上のレベルの話をしましょう。
 現実に紛争や事件に直面して法律相談をしたい人の関心は、客観的な法律知識のレベルにとどまるのではなく、少しでも自分に有利な解決を図りたいということにあるのがふつうだと思います。そして、一般の方は、事実関係の方は決まっていて、より有利な解決を図るには有利な法解釈をひねり出すことが有効だと考えがちです。しかし現実には、弁護士が相談者・依頼者に有利な解決を図るには、法律解釈で工夫するよりもまず相談者・依頼者に有利な事実関係とそれを裏付ける証拠を発見することが有効だということが多いのです。
 現実の事件は千差万別ですので、どういう事情が有利に働くかはパターンでは割り切れません。相談者・依頼者が自分に有利だと思わないで(多くの場合、重要でないとか関係ないと思って)話さなかったり、場合によっては不利だと思って隠していたりすることが、有利に使えることもあります。証拠書類も同様で、相談者・依頼者が関係ないと思っている書類に重要な事実が隠れていることは少なくありません。そういう事実や証拠書類の存在は、弁護士にも最初からわかるわけではなく、相談者・依頼者の話を聞いていくうち、様々な書類を見ていくうちに、それならこういうこと、こういう書類もあるのではないかということで少しずつ話が深まっていってわかることが多いのです。相談者・依頼者が弁護士の質問に素直に答えてくれるほど、関係しそうな様々な書類を見せてくれるほど、交渉や問題解決に使える事実と証拠が発掘されていく可能性が高まります。そういう有利な事実と証拠の発掘は、相談者・依頼者と弁護士の共同作業になり、この共同作業がうまく行くとき、よりよい一歩進んだ法律相談ができると、私は思っています。
 1回目の30分とか1時間の法律相談で、そういう段階にまで進めるとは限りません。しかし、どちらにしても面談しなければ、最低でも電話等で「やりとり」をしなければ、そういうレベルの相談にはならないことは明らかでしょう。
だから法律相談は面談がベスト、せめて電話でお話ししたい
 雑誌などで「法律相談」という名前をつけてやっているのは、一般的な法律知識を書いているだけで、本来の法律相談と呼べるものではありません。電子メールや手紙、FAXなどで相談をしたいという人は、そういう雑誌などで「法律相談」とされているのを見て誤解しているのではないかと、私には思えます。
 私は、これまで説明したことでわかると思いますが、相談者の具体的な事情の下で相談者に本当にためになる/意味がある相談をするには、電話+面談がベストだと確信しています。以前は、それを理由に電子メールでの法律相談はお断りしていました。さまざまな事情で面談が困難な人もいるので電子メールでの法律相談も行うことにしましたが、質の高い相談を弁護士にとっても相談者にとっても効率よく行うためには、電子メールより電話+面談が遥かにベターだと今も考えています。

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