◆短くわかる民事裁判◆
判決主文:金銭請求認容
金銭の支払い請求(例えば、貸金請求とか、売買代金請求、請負代金請求、損害賠償請求など)を全部認容(にんよう)する(原告全部勝訴の)判決の主文は、ごくシンプルな場合、
1.被告は、原告に対し、○円及びこれに対する令和○年○月○日から支払い済みまで年3%の割合による金員を支払え。
2.訴訟費用は被告の負担とする。
3.この判決は(第1項に限り)仮に執行することができる。
となります。
1項の年3%の割合による金員は、遅延損害金で、被告が金銭の支払いをすべき日(契約などで支払期日と定められている日。法律用語では「弁済期(べんさいき)」と呼ばれます)の翌日から発生します。貸金請求の利息とか、それ以外でも契約で遅延損害金利率が定められているときはその利率になります(ただし、貸金の利息や遅延損害金は利息制限法の制限利率を超えることはできませんし、貸金以外の遅延損害金について事業者と消費者の間の契約では消費者契約法が定める年14.6%を超えることはできません)。契約で利息や遅延損害金の利率が定められていない場合は、法律で定められた(法定利率:ほうていりりつ)年3%が自動的に適用されます。この年3%は、2020年4月1日以降に支払い義務が発生したものに適用されます(それ以前の場合、支払義務者=債務者が会社の場合は年6%、それ以外の場合は年5%が適用されます)。また2020年4月1日以降の法定利率は3年ごとに見直されることとなっていて、2026年4月1日以降は違う利率になるかも知れません。
判決でこのように単純に「支払え」とされた場合、支払期限の猶予や分割払いは認められず、直ちに全額支払えという意味です。そのとおりに支払わないときは、原告が被告に対して財産を差し押さえる強制執行が可能です。
判決で金銭の支払いを命じる場合は、仮執行宣言(かりしっこうせんげん)がつけられるのがふつうです。仮執行宣言がついている場合、判決が確定しなくても(敗訴した被告が控訴しても)、勝訴した原告は強制執行をすることができます。もちろん、控訴審で判決が覆されれば、原告は仮執行で得た金銭に(執行後返還するまでの)法定利息(年3%)をつけて返還しなければなりませんが。
敗訴した被告が、原告による仮執行を避けたい場合は、控訴して執行停止決定(しっこうていしけってい)を取るという方法があります。通常は、控訴をした上で、支払を命じられた金額の8割程度の保証金を積むことで、執行停止決定を受けることができます。
2項の訴訟費用の負担の裁判について、仮執行宣言をつけるかどうかは裁判官の好みとも言えます。私の経験上は、つかないことが多いように思えます。
判決については、モバイル新館の 「弁論の終結と判決」でも説明しています。
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