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短くわかる民事裁判◆
借入残高の計算方法
 貸金業者からの借金の請求は、それまでの借入と返済を経て結局借金がいくら残っているかを計算し、その借入残高について行われます。
 借入残高は、借入や返済が行われる度に変動します。その計算方法について説明します。
 借主が返済をするときには、その都度、前回の返済以降発生した利息、もし返済が支払期日に遅れている場合は、支払期日以降(正確には支払期日の翌日以降)に発生した遅延損害金を計算し、それを返済額から差し引いた額が借入残高(元本)から差し引かれて、その分借入残高が減少するということになります。
 利息は、前回の借入残高(元本)×約定利率×(前回の支払日の翌日から)支払期日までの経過日数÷1年の日数で計算します(閏年にどうするかは「利息の計算方法:閏年の扱い」で説明しています)。
 遅延損害金は、前回の借入残高(元本)×遅延損害金利率×支払期日(支払うべきだった日)の翌日から返済日(実際に払った日)の経過日数÷1年の日数で計算します(閏年の扱いにつき上に同じ)。
 約定利率、遅延損害金利率が利息制限法の制限利率を超えているときは、どちらも利息制限法の制限利率で計算します。
 前回の返済後に追加借入があるときは、追加借入日までは前回の返済時の借入残高、追加借入日の翌日からは前回の返済時の借入残高+追加借入額を元本として分けて計算することになります。
 借入や返済が多数回あると、手計算ではかなり面倒なことになります。実際にはエクセルの計算シートで計算するのがふつうです。

 返済金が元本に充当(じゅうとう。元本の返済に充てられるか)されるかについては、貸金業者の契約書では必ず、返済金は遅延損害金、利息、元本の順に充当されますという条項が定められていますので、まず遅延損害金と利息に充てられ遅延損害金と利息が全額支払われないと元本は減らないことになります。もし、契約書にその条項がなかった場合でも、民法上、借主が一方的にまず元本に充当すると言ってもそれは許されず、遅延損害金と利息に先に充当されるものと定められています(民法第489条)。もちろん、借主の一存ではなく貸主も合意すれば、遅延損害金と利息をそのままにして元本に先に充当することも可能ですが、貸金業者がそれに応じることはまず考えられません(債務整理の交渉をしていると、支払い能力の低い借主の場合に、そういう扱いをすると貸金業者がいうことはありますが、それを書面にしろというとそれはできないといわれるのがふつうです)。

 貸金業者からの貸金請求では、そういった計算(約定利率が利息制限法の制限利率を超えている場合は、利息制限法の制限利率に引き直した計算)を行って(ふつう、訴状に別紙で計算書を付けて)最終の借入残高を計算し、その額と未払い利息、遅延損害金を請求してきます。
 約定利息が利息制限法の制限利率を超えている場合は、貸し借りの最初から利息制限法の制限利率に引き直して計算すると過払いということもあります。その場合、逆に借主が貸金業者に対して過払い金返還請求をすることができます。約定利率が利息制限法の制限利率を超えている貸金業者が、借入残高があるのに長らく支払の督促をしてこないという場合、実は過払いなので督促しないということがままあります。その疑いがあるときは、貸金業者に取引履歴の開示請求(借主が請求すれば貸金業者は開示しなければなりません)をした上で弁護士に相談するという道もあります。

 利息制限法については「弁護士に依頼すると借金が減るわけ」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる 「利息制限法の基礎知識」でも説明しています。
  

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