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短くわかる民事裁判◆
抗告許可がなされたとき
 高裁の決定に対して抗告許可申立てがなされ、理由書を検討して、原決定をした高裁の担当部が抗告を許可する場合(「抗告許可の実情」で司法統計を紹介しているように、極めて稀なことですが)、「本件抗告を許可する。」という決定がなされます。理由は「抗告許可申立て理由書に記載された理由によれば、原決定には、民事訴訟法337条2項所定の事項が含まれると認められる。」くらいの簡単なもののようです。
(今回いろいろ探してみましたが、抗告許可決定そのものは見つけることができませんでした。抗告許可決定を紹介しているものとして、オリエンタルモーター(賃金差別)(訴訟参加許可決定に係る抗告却下決定に対する抗告許可申立て) 東京高裁2001年11月8日決定についての労働委員会関係裁判例データベース:厚労省/中労委と、遠藤国賠文書提出命令却下決定に対する抗告許可申立て東京高裁1999年9月3日決定についての支援者によると思われる紹介を発見しました。上の主文、理由についての記載はこれらによっています。なお、どちらの事件も最高裁は抗告を棄却しています)

 抗告許可決定があると、高裁は最高裁に事件記録を送ります。高裁の抗告許可があったときは、最高裁への許可抗告があったものとみなされます(民事訴訟法第337条第4項)ので、改めて(最高裁を名宛て人とする)許可抗告申立書や許可抗告理由書を作成・提出することは予定されていません。

 抗告許可をする際、高裁は、抗告許可申立て理由中に重要でないと認めるものがあるときはこれを排除することができ(民事訴訟法第337条第6項、第318条第3項、民事訴訟規則第209条、第200条)、その場合、許可決定で、排除するものを明らかにすることとされています(民事訴訟規則第209条、第200条)。
 2000年度裁判所書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」2019年補訂版411ページに掲載されている抗告許可決定の参考例での文例では「申立ての理由によれば、上記決定(命令)について、民事訴訟法337条2項所定の事項を含むと認められるが、申立ての理由中、○○な重要ではないと認められる。」とし、主文でも「本件抗告を許可する。申立ての理由中、○○を排除する。」とされ、○○には「第○点」、「民法○○条の解釈適用の誤りをいう点」、「第○点を除く部分」、「民法○○条の解釈適用の誤りをいう点を除く部分」などと記載して排除した部分を特定するよう注記されています。
 許可決定で排除された理由以外が最高裁での審理対象となります(民事訴訟法第337条第6項、第318条第4項)。

 最高裁での手続は、基本的に特別抗告と同じとされています(抗告許可があった場合について、民事訴訟法第337条第6項が特別抗告の手続に関する第336条第3項を、民事訴訟規則第209条が、特別抗告の手続についての第208条を、それぞれ準用しています)。(事件記録符号が(許)であることが違うくらいでしょうか)
 最高裁での特別抗告の手続については「最高裁での手続(特別抗告)」で説明しています。

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