◆短くわかる民事裁判◆
最高裁での手続(特別抗告)
特別抗告が申し立てられて原裁判所(高裁、地裁、簡裁)から事件記録が最高裁に送られると、まず最高裁の民事受付で事件記録符号(ク)の事件番号が振られ(高裁からだけではなく地裁からでも簡裁からでも家裁からでも(ク)になります。ただし行政事件は(行ト)になります:2000年度裁判所書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」2019年補訂版308〜309ページ)、事務分配に従い担当する小法廷、主任裁判官が決定され、事件記録が担当の小法廷に回されます。(特別抗告の場合、最初の抗告である即時抗告・通常抗告とは違って、原裁判所段階で特別抗告状審査、特別抗告状副本の相手方への送達、特別抗告理由書の裁判所への提出が済んでいます。それについては「原裁判所での手続(特別抗告)」で説明しています。最高裁への上告・上告受理申立ての場合と同じということですが)。
特別抗告の場合、最高裁は、事件記録が来た段階で、まず当事者(特別抗告人と相手方)に事件記録到着通知書を送付することとされています(民事訴訟規則第208条、第197条第3項。これも最高裁への上告・上告受理申立ての場合と同じです)。
民事訴訟規則の規定上、最高裁は特別抗告が不適法でその不備を補正できないときや特別抗告理由書が期間内に提出されないか理由の記載が民事訴訟規則の規定に違反している(これらの場合は本来原裁判所が特別抗告却下決定をすることが予定されているのですが原裁判所が却下決定をせずに最高裁に事件記録を送付したときということです)として特別抗告を却下する場合あるいは特別抗告の理由が明らかに憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反あることに該当しないとして決定で特別抗告を棄却する場合以外は、相手方に特別抗告理由書の副本を送達すべきこととされています(民事訴訟規則第208条、第198条本文)。しかし、特別抗告に対する最高裁の決定のほとんどが後者ですし、さらに口頭弁論を経ないで審理及び裁判をする場合において、その必要がないと認めるときは、この限りでないとされている(民事訴訟規則第208条、第198条但し書き)ので、規則上特別抗告理由書を相手方に送達しなければならないケースはほとんどなく、実際に送達されることはほとんどないと思われます。
実際には、ほとんどの事件では、事件記録到着通知書以外には当事者に連絡がないまま、決定が送られてくる(最高裁の場合、決定は特別送達ではなく簡易書留でくるのがふつうです)(決定が出たから取りに来るなら来てくれと連絡があることはありません)という形で終了します。
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