庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

短くわかる民事裁判◆
事件記録符号
 裁判所では係属した事件に事件番号を振ります。事件番号を振る際には、事件の種類ごとに決まった事件記録符号を用います。東京地裁霞ヶ関本庁の受付で2025年の最初に受け付けた民事通常事件は、東京地裁令和7年(ワ)第1号になります。この(ワ)の部分が、事件記録符号です。
 事件記録符号は、民事事件ではカタカナ(一部漢字もあります)、刑事事件ではひらがなを用います。

 地裁(地方裁判所)の1審通常民事事件は(ワ)です。
 この事件で判決が言い渡され、不服のある当事者(原告、被告)が控訴するときは、高裁宛の控訴状を地裁の民事受付に提出します。この時点で地裁では(ワネ)の番号を振ります。控訴があった事件の記録が地裁から高裁に送られると、高裁の民事受付で(ネ)の番号を振ります。その後、控訴事件は(ネ)の番号で扱われます。控訴審で、事件記録が地裁にある間に書面等(控訴理由書など)を提出する場合は、その書類には(ワネ)番号を記載し、高裁に記録が移った後に提出する場合は(ネ)番号を記載します。
 控訴審判決に対して不服のある当事者(控訴人、被控訴人)が最高裁に上告・上告受理申立をするときは、最高裁宛の上告状兼上告受理申立書を高裁の民事受付に提出します。この時点で高裁では上告事件には(ネオ)、上告受理申立事件には(ネ受)の番号を振ります。上告事件では、事件記録が高裁にあるうちに上告理由書、上告受理申立て理由書を高裁の控訴審を担当した部に提出します(高裁は、理由書が提出された後で最高裁に記録を送ります)ので、上告理由書には(ネオ)番号、上告受理申立て理由書には(ネ受)番号を記載します。事件記録が最高裁に送られると、最高裁が上告事件には(オ)、上告受理申立事件には(受)の番号を振り、それらの番号と担当小法廷を記載した記録到着通知書が送られてきます。

 簡裁(簡易裁判所)の1審通常民事事件は(ハ)です。同様にこれに対して控訴するときは地裁宛の控訴状を簡裁の民事受付に提出し、簡裁で(ハレ)の番号が振られ、地裁に事件記録が送られると地裁で(レ)番号が振られて、その後控訴事件は(レ)番号で扱われます。控訴審判決に対して上告するときは、高裁宛の上告状を地裁の民事受付に提出し、地裁では(レツ)番号が振られ、上告理由書は(レツ)番号を記載して地裁の控訴審を担当した部に提出します。その後地裁から高裁に事件記録が送られて、高裁で(ツ)番号が振られます。

 離婚事件などの家裁(家庭裁判所)での訴訟事件は(家ホ)の番号が振られます。離婚訴訟は、かつて地裁が取り扱っていたときには(タ)の番号が振られていました。
 家裁の1審判決に不服がある当事者(原告、被告)が控訴した場合、高裁宛の控訴状を家裁の受付に提出します。その場合、離婚訴訟であっても、高裁では通常事件とされて(ネ)の番号が振られます。そうすると、これまでのルールからして、家裁では(家ホネ)という符号がつけられそうですが、この場合は(家ト)の番号が振られます。高裁以降は(最高裁も)1審が地裁の事件と同じです。

 ここまでは、いわゆる通常事件というか、判決手続が予定される事件です。
 次に、それ以外の決定や審判がなされる事件について説明します。

 地裁の労働審判事件は(労)です。労働審判に対して異議申立をすると、通常訴訟に移行し、そのまま(ワ)の番号が振られます。
 地裁の保全命令事件(仮差押え、仮処分)は(ヨ)です。
 地裁の事件係属中に、他の裁判所への移送の申立をしたり、文書提出命令の申立をする場合、事件の担当部ではなく地裁の民事受付に申立書を提出し、それは係属中の事件(基本事件と呼ばれます)とは別に(モ)の番号が振られます。(モ)の符号はまとめて「民事雑事件」とも呼ばれています。これらの事件での地裁の決定に対して、不服申立である「抗告(こうこく)」をすると、地裁では(ソラ)の番号が振られ、高裁で(ラ)の番号が振られます。高裁の決定に対してさらに不服申立をするときは、抗告許可申立特別抗告(特別抗告の理由は憲法違反のみ)をすることになります。この場合、高裁では抗告許可申立は(ラ許)、特別抗告は(ラク)の番号が振られます。高裁が抗告を許可すると(許可されることはめったにありませんが)、最高裁では(許)の番号が振られます。特別抗告は最高裁では(ク)の番号が振られます。

 家裁で、離婚事件と別に子の親権者・監護者の指定・変更、財産分与、養育費などの親族関係の事件や遺産分割などの相続関係の事件について審判を申し立てると、その記録符号は(家)となります。
 そういった家事審判事件について審判に対して不服申立をするときは、「抗告(こうこく)」という手続になりますが、そのときは家裁では(家ニ)の番号が振られ、高裁で(ラ)の番号が振られます。高裁の決定に対してさらに不服申立をするときは、上で説明した地裁の決定から始まるときと同じで、抗告許可申立か特別抗告(特別抗告の理由は憲法違反のみ)をすることになります。この場合、高裁では抗告許可申立は(ラ許)、特別抗告は(ラク)の番号が振られます。高裁が抗告を許可すると(許可されることはめったにありませんが)、最高裁では(許)の番号が振られます。特別抗告は最高裁では(ク)の番号が振られます。

 地裁の破産事件は(フ)、小規模個人再生事件は(再イ)です。

 事件記録符号については「間違いやすい裁判用語その2」でも説明しています。
 訴えの提起については「民事裁判の始まり」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる 「訴えの提起(民事裁判の始まり」でも説明しています。
  

**_**区切り線**_**

短くわかる民事裁判に戻る

トップページに戻るトップページへ  サイトマップサイトマップへ

民事裁判の話民事裁判の話へ   もばいるモバイル新館 民事裁判の話