◆短くわかる民事裁判◆
抗告許可申立て
許可抗告(抗告許可申立て)は、不服申立ての対象の高等裁判所の決定(原決定)の告知を受けた日の翌日から数えて5日以内(期間の末日が土日祝日あるいは12月29日から1月3日の年末年始期間の場合は次の平日まで)に(民事訴訟法第337条第6項、336条第2項)抗告許可申立書を、原決定をした高裁の民事受付に提出して行います(民事訴訟法第337条第6項、第313条、第286条)。
ファクシミリでの提出はできません(民事訴訟規則第3条第1項第1号:民事訴訟費用法の規定により手数料を納付しなければならない申立てに係る書面になるので。1997年度書記官実務研究報告書「新民事訴訟法における書記官事務の研究(U)9ページ)。
したがって、原裁判所の民事受付に持参するか郵送になります。郵送の場合、昨今の郵便事情を考えれば、普通郵便は避けるべきでしょう。遠方であれば、相当程度の余裕を持って、レターパックなどの郵便追跡サービスのある郵便で、配達状況を確認し、もし事故等がありそうなら(追跡で間に合わなそうだったら)最終期限当日には持参も可能にしておくというのが確実な方法だと思います(私ならそうします)。
抗告許可申立書の宛先は、通常の上訴の場合とは異なり、原決定をした高等裁判所です。
抗告許可申立書に記載する申立ての趣旨は、求める決定の主文を記載する必要はなく、「本件抗告を許可する。」か「本件抗告を許可する。原決定を破棄し、さらに相当の裁判を求める。」です。
抗告許可申立書は、上告受理申立書等と同様、定型的形式的なもので足ります。東京高裁が公開している記載例はこちら。
上告と上告受理申立ては、1通の書面ですることができ(民事訴訟規則第188条)、実際それが推奨されています(東京高裁が公開している記載例はこちら)。しかし、抗告許可申立てと特別抗告は、高裁の同じ決定に対するものであっても、1通の書面ではできず、同時に申し立てる場合でも別の書面にしなければなりません(民事訴訟規則第209条が188条を準用していないことから)。上告と上告受理申立ては通常はどちらも最高裁に記録が送られて最高裁が判断(決定等)することが予定されているのに対し、抗告許可申立ては高裁が許可しない限り最高裁には記録も送られずに終わり、実際にほとんどが高裁で終わるからです。
抗告許可申立て書については、相手方への送達が予定されています(民事訴訟規則第209条、第189条第2項)ので、正本1通の他に相手方の数の副本も提出します
許可抗告の申立てがあると、高裁の民事受付は事件記録符号(ラ許)の事件番号を振って、担当部(抗告許可申立ての対象となる原決定をした部)に申立書を送り、担当部は申立人に対して抗告許可申立て通知書を特別送達で郵送します(民事訴訟規則第209条、第189条)。
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