◆短くわかる民事裁判◆
抗告許可申立ての審理
「抗告許可申立て」で説明したように、抗告許可申立ては、対象となる原決定をした高裁宛の抗告許可申立書(こうこくきょかもうしたてしょ)をその原決定をした高裁の民事受付に提出して行います。
許可抗告の申立てがあると、高裁の民事受付は事件記録符号(ラ許)の事件番号を振って、担当部(抗告許可申立ての対象となる原決定をした部)に申立書を回します。
抗告許可申立書の審査の権限は、原決定をした高裁にあります(民事訴訟法第337条第6項、第313条、第288条)。
抗告許可申立書の記載などの不備があったり、抗告手数料の納付がない場合は、原決定をした高裁の裁判長が申立人に対して相当の期間を定めた補正命令を出し、申立人が補正しない場合は、抗告許可申立書の却下命令を出すことになります(民事訴訟法第337条第6条、第313条、第288条、第137条第1項、第2項)
原決定をした高裁の裁判長が抗告許可申立書を却下したときは、その命令に対してまた即時抗告をすることができます(民事訴訟法第137条第3項)。裁判長の却下命令に対する即時抗告は、「抗告裁判所の決定」に対するものではないので、再抗告ではなく、通常の(最初の)即時抗告になります。
抗告許可申立てが不適法でその不備を補正することができないことが明らかであるときに原裁判所が決定で却下する棄却する規定(民事訴訟法第316条第1項)は許可抗告では準用されておらず(民事訴訟法第337条第6項での準用から外されている:2000年度裁判所書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」2019年補訂版407ページ。民事訴訟法第313条を介して第287条第1項が準用されているとも読めると思うのですが)、抗告許可申立てが不適法でその不備を補正することができないことが明らかであるときは、抗告不許可決定をする扱いとされています(2000年度裁判所書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」2019年補訂版409ページ)。
抗告許可申立てを受けた原決定をした高裁の担当部は、裁判長の再抗告状却下命令や抗告却下決定をする場合を除き、申立人に対して抗告許可申立て通知書を送達します(民事訴訟規則第209条、第189条第1項)。原決定をした高裁の担当部は、抗告許可申立ての相手方に対しても抗告許可申立て通知書を送達し、その際には抗告許可申立書の副本も送達します(民事訴訟規則第209条、第189条第1項、第2項)。
抗告許可申立て理由書の提出期限は、申立人に抗告許可申立て通知書が送達された日から14日間となります(民事訴訟規則第210条)。
抗告許可申立て理由書については、期限内に提出しない場合に決定で却下するという規定(民事訴訟法第316条第1項第2号)が準用されていないので、それを理由に却下決定がなされるわけではありません。
許可抗告は、高裁が抗告許可申立てに対して許可した場合のみ認められる(最高裁に送られて審理される)という制度ですので、高裁が許可しなければそれまでです。実体は、「許可抗告の実情」で統計を示しているように、ほとんど許可されません。また、「抗告不許可決定」で説明しているように、不許可決定に理由がきちんと書かれることはほぼありません。申し立てる側からは実に虚しく絶望的なものです。
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