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短くわかる民事裁判◆
附帯控訴の提起
 附帯控訴は、控訴裁判所宛の附帯控訴状を、控訴審の口頭弁論終結までに、第1審裁判所の民事受付または控訴裁判所の民事受付に提出して行います(民事訴訟法第293条第1項、第3項、第286条第1項)。
 附帯控訴状は、第1審裁判所にも控訴審裁判所にも提出できます。訴訟記録が第1審裁判所にあるうちに控訴裁判所に附帯控訴状が提出された場合、控訴裁判所では受理して立件し担当部を決め、担当部で附帯控訴状を保管し、訴訟記録が控訴裁判所に到着した時点で同じ担当部に配点するため、控訴裁判所側では第1審裁判所に附帯控訴があったことを連絡し、訴訟記録にメモで(控訴裁判所の民事受付が附帯控訴が先行していることを看過しないように)注意喚起しておいてもらうというような扱いをしているようです(1999年度書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」2019年補訂版103ページ)。

 ファクシミリでの提出はできません(民事訴訟規則第3条第1項第1号:民事訴訟費用法の規定により手数料を納付しなければならない申立てに係る書面になるので。1997年度書記官実務研究報告書「新民事訴訟法における書記官事務の研究(U)9ページ)。
 附帯控訴状を提出する際には相手方の数の副本も同時に提出します(民事訴訟規則第178条、第179条、第58条第1項)。
 最高裁1968年11月15日第二小法廷判決は、訴訟委任状で委任事項に「控訴」が明記されている(通常の書式で、控訴は委任事項として明記されています)第1審の訴訟代理人(弁護士)は、その第1審の訴訟委任状によって(つまり控訴審で訴訟委任状を取り直さなくても)、控訴審で附帯控訴をし、訴えを変更して請求の拡張をすることができるとしています。この判決の判示では、第1審係属中に本人(依頼者)が死亡していることが窺われるけれども、それでもそれができると判示されています。弁護士の感覚では、かなり危ない感じがします。現実には、附帯控訴をするときに訴訟委任状を取り直すのが通常だと思います。

 資格証明書(当事者が法人の場合の法人登記簿一部事項証明書等)については、「第1審で提出している場合は、必ずしも控訴審で資格証明書の提出が必要であるとはいえない」との見解もあります(1999年度書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」2019年補訂版65ページ)が、実際には裁判所も提出を求め(東京弁護士会の機関誌での東京高裁書記官の回答:こちらのファイルの5ページ左上参照)、提出するのが通常です。

 民事受付では、附帯控訴状の形式と附帯控訴提起手数料納付と郵券の予納等を確認し(附帯控訴提起手数料の額について附帯控訴人と裁判所受付の意見が違う場合は、最終的には控訴裁判所の判断になるので、受付では附帯控訴人主張の印紙のままで担当部に回されます)、第1審裁判所に附帯控訴状が提出された場合は、地裁では事件記録符号(ワネ)、簡裁では事件記録符号(ハレ)の事件番号を振って、1審判決をした担当部に附帯控訴状を回します。控訴裁判所に附帯控訴状が提出された場合は、高裁では事件記録符号(ネ)、地裁では事件記録符号(レ)の事件番号を振って、既に訴訟記録が控訴裁判所に到着して控訴の担当部に回っているときはその担当部に、訴訟記録が控訴裁判所に到着していない場合は上で説明したように附帯控訴の担当部を決めてその担当部に回します。

 控訴については「控訴の話(民事裁判)」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる 「控訴(民事裁判)」でも説明しています。

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