◆短くわかる民事裁判◆
全部勝訴者の附帯控訴・請求拡張
全部勝訴者は控訴の利益がなく、控訴できないのが原則とされています(これについては「全部勝訴者は控訴できるか(原則):不能」で説明しています)。
では、自分からは控訴できないとして、相手方が控訴した場合、附帯控訴(ふたいこうそ)はできるでしょうか。民事訴訟法第293条第1項は、「被控訴人は、控訴権が消滅した後であっても、口頭弁論の終結に至るまで、附帯控訴をすることができる。」と定めています。控訴権がなくても附帯控訴はできるというのですから、控訴の利益がないとされる者でも附帯控訴はできそうです。
そして、控訴審においても訴えの変更は可能とされています(民事訴訟法第297条、第143条)。
そうすると、控訴の利益がない全部勝訴者も、相手方が控訴している限りは、附帯控訴をして請求の拡張をすることができるということになります。(全部勝訴者の場合、請求の拡張をしないのなら附帯控訴をする意味がありません:拡張前の請求はすでにすべて認められているのですから)
実際、最高裁1957年12月13日第一小法廷判決、最高裁1973年2月15日第一小法廷判決はそれを認めています。
全部勝訴者は控訴の利益がなく控訴できないといっても、相手方が控訴すれば、附帯控訴して請求を拡張することで、1審で全部(100%)認められた請求を拡大して、それ以上(100%超)の請求を控訴審で主張し求めることができるわけです。
ただ、附帯控訴は相手方が控訴しなければできませんし、附帯控訴した後に相手方が控訴を取り下げれば(控訴の取り下げは控訴審の判決があるまでいつでも、反対当事者の同意を得ることなくすることができます:民事訴訟法第292条)、また相手方の控訴が不適法として却下されれば効力を失ってしまいますが(民事訴訟法第293条第2項)。
控訴については「控訴の話(民事裁判)」でも説明しています。
モバイル新館の「控訴(民事裁判)」でも説明しています。
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