◆短くわかる民事裁判◆
控訴提起に伴う執行停止決定
原告勝訴の仮執行宣言付きの第1審判決に対して被告が控訴提起するとともに執行停止の申立てをすると、通常は、原裁判所つまり第1審判決をした裁判官が執行停止決定を行い、その決定が原告に送達されてきます。
原告側では、自分を勝訴させてくれた(仮執行宣言をつけた)裁判官の名前で、勝訴判決後すぐに被告の申立てを認める(その仮執行を停止するという)決定が、それも代理人(弁護士)に依頼しているのに自分宛に(自宅に)送られてくることに驚くことになりますが、それはそういうものとして受け止める必要があります。
「控訴提起に伴う執行停止申立て」で説明しているように、仮執行宣言付きの敗訴判決を受けた企業・事業者は控訴提起の上で執行停止の申立てをすることが多く、かつ控訴段階での執行停止の要件は、控訴審で原判決が変更される可能性が「ないとはいえない」ということあるいはそれさえなくても執行によって著しい損害を受けるおそれがあることという、非常に緩いものですので、執行停止決定をしたからといって決して裁判官が被告(控訴人)に勝訴の見込みがあるなどと判断したものではありません。「ないとはいえない」という要件から見ても、原告に訴訟救助が認められてもそれが勝訴の見込みがあることを意味しないのと同様だと考えればいいでしょう。
実務上は、控訴段階では、被告が控訴提起をした上で、仮執行宣言付きの第1審判決で支払を命じられた額の7~8割程度の担保を積めば執行停止決定が認められるのがふつうです。
執行停止決定の標準的な主文は「前記仮執行宣言付き判決に基づく強制執行は、本案控訴事件の判決があるまで、これを停止する。」です。
執行停止の効力は、控訴審の判決があるまでです。控訴審の判決で第1審判決が変更されたときは、第1審判決の仮執行宣言自体が変更された限度で効力を失い(民事訴訟法第260条第1項)、控訴審判決が仮執行宣言をどうするか(民事訴訟法第310条)に従うことになります。控訴審判決で第1審判決が変更されないとき(控訴棄却・控訴却下の場合)は、執行停止決定が効力を失い第1審判決の仮執行宣言の効力が復活しますので、あとは控訴人(被告)側で上告提起の上で執行停止を求めるか、それが認められるかによるということになります(上告提起に伴う執行停止は要件が厳しく、まず認められないので、その段階で諦めて払ってくるのがふつうです)。
なお、執行停止決定に対しては、不服申立てはできません(民事訴訟法第403条第2項)。
執行停止決定は、第1審で訴訟代理人(弁護士)が付いている場合でも、執行停止決定時点までに控訴審の訴訟委任状が提出されていない限り(提出されていることはふつうはないと思いますが)、訴訟代理人事務所宛ではなく原告本人に送達するのが実務のスタンダードになっています(1999年度書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」2019年補訂版452ページ)。
おかげで、企業相手の事件では、(判決の確定予定日を知るために裁判所に被告の控訴期限、実際には被告への第1審判決送達日を尋ねる電話をしたら、その際書記官からもう控訴が出ていますといわれるような場合を除けば)原告本人から、執行停止決定が送られてきたという知らせで、被告が控訴したことを知ることが多いです。
控訴については「控訴の話(民事裁判)」でも説明しています。
モバイル新館の「控訴(民事裁判)」でも説明しています。
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