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短くわかる民事裁判◆
裁判官の忌避
 民事訴訟法は、裁判官について裁判の公正を妨げる事情があるときは、当事者は、その裁判官を忌避できると定めています(民事訴訟法第24条第1項)。

 この「裁判の公正を妨げる事情」については、裁判官が担当する事件またはその当事者との間に特別な関係を有するなど、その事件の手続外の要因により、担当する事件について更正で客観性のある裁判を期待し得ない客観的事情がある場合をいい、訴訟指揮または訴訟手続内における訴訟上の措置は、原則として忌避事由にならないとするのが裁判所の一般的な姿勢です(最高裁の決定を探しましたが、事例判断で一般論を述べていないものしか見つからず、引用は札幌高裁2012年12月28日決定についての判例時報2255号6~7ページ【4】の紹介から)。

 担当する事件またはその当事者との間の特別な関係について、かつて最高裁は、原審(高裁)の裁判長が被上告人(つまり原審の勝訴者)の訴訟代理人の娘婿であっても除斥事由に該当せず、またこれがため直ちに民訴37条(現24条)にいわゆる裁判官につき裁判の公正を妨ぐべき事情があるものとはいえないとしました(最高裁1955年1月28日第二小法廷判決)。これについては各方面からの批判が相当強いですが。

 忌避申立ては、大半の場合、裁判官の訴訟指揮、裁判の場面での言動を理由に行われ、裁判所は、そのような事由は忌避事由に当たらないとしてはねつけることになります。
 訴訟外の関係でさえ、寛容に認めることを考えれば、現実には、忌避申立てが認められる可能性はほぼないのが実情です(公刊物に掲載されている唯一のものと見られる認容例を「忌避申立てが認められた例」で紹介しています)。

 民事裁判の手続全般については「民事裁判の審理」でも説明しています。
 民事裁判の登場人物についてはモバイル新館のもばいる 「民事裁判の登場人物」でも説明しています。
  

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