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短くわかる民事裁判◆
忌避申立てで訴訟手続はいつまで停止するか
 裁判官の除斥の申立てや忌避の申立がなされた場合、その申立てについての決定が確定するまで、訴訟手続は停止されます(民事訴訟法第26条本文)。

 忌避申立てを却下する決定に対しては即時抗告ができ(民事訴訟法第25条第5項)、即時抗告には執行停止の効力があります(民事訴訟法第334条第1項)ので、即時抗告期間の経過前は却下決定は確定せず、即時抗告の申立てがあると、その即時抗告に対する決定がなされるまでは却下決定が確定しません。
 即時抗告に対する抗告棄却決定がなされた後はどうでしょうか。
 忌避申立てに対する決定は、(高裁、最高裁の裁判官に対する忌避を除き)地裁が行います(簡裁の裁判官に対する忌避申立てについては地裁が決定します:民事訴訟法第25条第1項)ので、即時抗告に対する決定は高裁が行います。高裁の決定に対しては、許可抗告または特別抗告しかできません(民事訴訟法第336条第1項、第337条第1項。「高裁の決定に対する不服申立て:許可抗告・特別抗告」で説明しています)。
 高裁の即時抗告棄却決定に対して、高裁に抗告許可申立てをした場合、それによって忌避申立て却下決定は確定しないことになるでしょうか(裁判業界では抗告許可申立てに「確定遮断効(かくていしゃだんこう)」があるかという言い方をします)。一般に、抗告許可申立てや特別抗告申立てには確定遮断効はないといわれています。忌避申立てに対する却下決定に対する即時抗告棄却後、申立人が抗告許可を申し立てたが、忌避の対象とされた裁判官が口頭弁論期日を指定したことについて、東京高裁2016年6月14日決定は、忌避申立てを却下する決定に対する即時抗告を棄却する決定はその性質上即時に効力が生じており、その効果は抗告許可の申立てがされることにより左右されず、本件裁判官が基本事件について行った口頭弁論期日の指定は何ら民訴法に反するものではないと判断し、最高裁2016年11月1日第三小法廷決定は、原審の判断は正当として是認することができるとしています(判例時報2348号4~5ページ【1】)。
 そうすると、簡裁の裁判官または地裁の裁判官に対する忌避申立てによる訴訟手続の停止は、法的には即時抗告棄却決定までということになります。
 そして、高裁の裁判官または最高裁の裁判官に対する忌避申立ての場合、即時抗告ができませんので、訴訟手続の停止は忌避申立て却下決定までということになります。

 民事裁判の手続全般については「民事裁判の審理」でも説明しています。
 民事裁判の登場人物についてはモバイル新館のもばいる 「民事裁判の登場人物」でも説明しています。
  

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