◆短くわかる民事裁判◆
3号再審事由:相手方の代理権の欠如の主張
代理権を欠いたことという民事訴訟法第338条第1項第3号の再審事由は、通常の感覚では、適法なあるいは権限のある代理人の訴訟活動がなされなかった者を保護する趣旨ですから、代理権を欠いた側だけが再審請求をすることができ、代理権に問題がなかった側が相手方に代理権が欠けていたことを主張して再審請求をすることはできないように思えます。
最高裁2001年12月18日第三小法廷決定は、再審被告の会社の代表者とされた者が代表権限がなくそのためその者から委任された弁護士は訴訟追行権限を有しなかったとして民事訴訟法第338条第1項第3号の再審事由を理由として提起された再審の訴えに対して、代理権の欠缺によって裁判に関与する機会が得られなかったという不利益を受けるのは適法に代理されなかった当事者であり、代理権の欠缺は当事者が追認さえすればいつでも瑕疵が治癒されることなどを考慮すると民事訴訟法第338条第1項第3号の事由に基づいて再審請求をすることができるのは再審被告に限られ再審原告はこれを理由とする再審請求をすることはできないとして再審請求を棄却した原決定(大阪高裁2001年9月11日決定)に対して「本件再審請求を棄却すべきものとした原審の判断は、是認することができる。論旨は採用することができない。」と判示して再審原告の抗告を棄却しました(判例時報1790号25ページ【27】)。
この決定について、判例時報の記事で最高裁調査官は「原審の判断を正当として是認したものではないことからすると、右決定によって最高裁の見解が明らかにされたとは必ずしもいえないと思われる。」(判例時報1790号25ページ)と、歯切れの悪いコメントをしています。
「代理権の欠如:法人代表者」で紹介した最高裁2008年9月12日第二小法廷判決(判例時報2043号8ページ【1】)、「代理権の欠如:集団訴訟の訴訟代理人」で紹介した最高裁2009年3月13日第二小法廷判決(判例時報2082号8〜9ページ【2】)に見られるように、最高裁は上告理由(民事訴訟法第312条第2項第4号)での民事訴訟法第338条第1項第3号とまったく同じ文言の規定について、相手方の代理権の欠如を理由とする上告を認めています。だとすると、再審請求では違うというのは据わりが悪く、そういう事情で最高裁調査官が言葉を濁しているのかなとも思えます。
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