◆短くわかる民事裁判◆
9号再審事由(判断の遺脱)と再審期間
民事訴訟法第342条第1項は、「再審の訴えは、当事者が判決の確定した後再審の事由を知った日から30日の不変期間内に提起しなければならない。」と定めています。
最高裁は、判断の遺脱については判決正本またはこれに代わる調書(いわゆる調書判決)の送達を受けた時点でそれを知ったものと推定され、その結果、再審期間(30日)の起算点となる再審の事由を知った日は判決正本等の送達を受けた日である(ただし、それは上告審判決以外では判決確定前なので、「判決の確定した後再審の事由を知った日」という民事訴訟法第342条第1項の規定から結局は判決確定の日から起算する)という判示を繰り返しています。
最高裁1970年12月22日第三小法廷判決は、「判断遺脱のような再審事由の存在は、その事柄の性質上、通例、判決正本の送達を受けてこれを閲読することにより知りうべき筈のものであるから、これを知りえなかつたとする特段の事由の主張立証のないかぎり、当事者において右判決正本の送達を受けた当時に右事由の存在を知つたものと推定することができる」、「本件は、当事者が判決確定前に再審事由の存在を知つていた場合にあたることになるが、このような場合における民訴法424条1項所定の30日の再審期間は、再審制度の性質および右424条の文理に照らし、判決確定の日からこれを起算すべきものと解するのが相当であり(前掲昭和二八年四月三〇日第一小法廷判決参照)、前記控訴審判決の確定した昭和四二年一月一九日から起算して30日を経過した後においては、不変期間の追完の許される場合を除いては、右判決に対する再審の訴を適法に提起しうる余地は存しない」と判示しています(判決引用の民事訴訟法の条項は当時のものであり、現行民事訴訟法の条項とは異なります)。
最高裁1961年9月22日第二小法廷判決は、再審の訴え提起後に再審事由を変更した場合について、「所論の再審事由の存在は特段の事由のない限り判決正本を一読することによりこれを知ることを得べく、これを知り得なかつたとする特段の事由の主張立証はないのであるから、上告人は前示判決正本の送達により右再審事由の存在を知つたものと認定した原審判断は相当であつて、所論のように再審事由の主張を右日時までなさなかつたからといつて、右日時までこれを知らなかつたものとすることはできない。そして本件におけるがごとく、再審の訴提起の後に、民訴427条2項によつて不服の理由を変更した場合においても、新な再審事由についてその出訴期間の遵守は、変更の時を標準とすべきものと解すべきであるから、再審事由を知り、かつ旧訴判決確定の日から30日を経過した後に申立てた所論の再審事由は不適法として却下すべき」として、変更時に、変更した再審事由についての再審期間が経過している場合は不適法却下すべきものとされました(判決引用の民事訴訟法の条項は当時のものであり、現行民事訴訟法の条項とは異なります)。
最高裁2012年4月25日第二小法廷決定は、判決確定(2008年2月8日)の3か月後(2008年5月28日)に3号再審事由を主張して再審の訴えを提起し、さらに5か月後(2008年10月27日)に9号再審事由の主張をした事案について、9号再審事由を理由とする訴えの変更は再審期間内に行われたものでありかつ判断の遺脱があると認めて再審開始を決定した大阪高裁2011年7月14日決定を、判断の遺脱を理由とする再審の訴えは再審期間の経過後にされたものであって不適法であり、また判断の遺脱があると認められないことは明らかであるとして、破棄し、(9号再審事由に基づく再審の訴えを却下し、3号再審事由に基づく再審の訴えを棄却した)原々決定(大阪地裁2011年3月30日決定)に対する抗告を棄却しています(判例時報2206号8〜9ページ【21】【22】)。この最高裁決定は、最高裁の従前からの姿勢を繰り返し確認したものですが、原決定の大阪高裁2011年7月14日決定がどのような理屈で再審期間内だとか判断の遺脱があると認めたのかはとても興味深いところです。判例時報の記事にはそこの記載がなく(2206号の「許可抗告事件の実情」だけじゃなく2191号の「最高裁民事破棄判決等の実情」でも)具体的な決定文が掲載されていなくて残念です。
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