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短くわかる民事裁判◆
貸金請求の請求の趣旨
 貸金請求では、原告は、通常は、被告に貸したお金のうち被告がまだ返していない金額(残元本)と返済すべき期限(支払期限、弁済期)までの利息、弁済期の翌日からの遅延損害金を請求することになります。
 原告が被告に、2025年4月1日に、返済期限を2025年12月31日、利息を年14.6%、遅延損害金を年21.9%として、300万円を貸し付け、被告がまったく支払わない状態で2026年2月1日に提訴するとすれば、弁済期までの利息が33万円、提訴日までの遅延損害金が5万7600円となります。その場合の請求の趣旨は、
1.被告は、原告に対し、金338万7600円及びうち金300万円に対する令和8年2月2日から支払い済みまで年21.9%の割合による金員を支払え。
2.訴訟費用は被告の負担とする。
との判決並びに仮執行の宣言を求める。
とすることになります。

 被告がまったく支払っていないのではなく、一部支払っているときは、「借入残高の計算方法」で説明しているように既払い額を利息と遅延損害金に充当した後元本に充当する計算を行って借入残高、未払い利息を確定し、請求の趣旨を決定することになります。

 なお、知人間の貸し借りで利息も支払期限も決めていなかったというような場合は、利息は請求できず、請求をした日が弁済期となり、その翌日以降、法定利率による遅延損害金を請求できます(民法第412条第3項、419条第1項)。原告が訴え提起前に被告に返済を求めていれば(それを被告が認めるか立証できれば)その翌日から遅延損害金を請求できますが、訴え提起前には返済請求をしていない(実務的にはそれが立証できない)場合は、訴状で請求したという扱いになります。その場合の請求の趣旨は、
1.被告は、原告に対し、金300万円及び本訴状送達の日の翌日から支払い済みまで年3%の割合による金員を支払え。
とすることになります(2項以降は同じ)。

 借主だけでなく、保証人も被告にする場合は、
1.被告らは、原告に対し、連帯して金338万7600円及びうち金300万円に対する令和8年2月2日から支払い済みまで年21.9%の割合による金員を支払え。
2.訴訟費用は被告らの負担とする。
との判決並びに仮執行の宣言を求める。
とすることになります。
 私が司法修習生の時(1980年代半ば)は、請求の趣旨や判決主文に「連帯して」という法的評価を示す文言は入れるべきでないと指導されました。その頃は「連帯して」ではなく「各自」と書けと言われていました。しかし、近年は、「連帯して」と書くことが裁判所からも求められているようです。

 訴えの提起については「民事裁判の始まり」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる 「訴えの提起(民事裁判の始まり)」でも説明しています。
  

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