◆短くわかる民事裁判◆
即時抗告状の提出先を間違えたとき
即時抗告は、抗告裁判所(決定が地裁なら高裁)宛の抗告状(こうこくじょう)を原裁判所(地裁の決定ならその地裁)の民事受付に提出して行います(民事訴訟法第331条本文、第286条)。
即時抗告状を間違って抗告裁判所(原決定が地裁の場合に高裁、原決定が簡裁の場合に地裁)に提出した場合、裁判所はどのように扱うでしょうか。
即時抗告状を抗告裁判所の民事受付に持参して提出した場合は、窓口で正しい提出先を指示し、原裁判所に提出するということになるのがふつうです。
窓口で正しい提出先に提出し直すよう指示してもこれに応じない場合や、郵送での提出の場合、裁判所は、標準的には、受付窓口では事件簿に記載するなどの立件(受付)の手続をして事務分配に従って担当部を決めて事件を配点し、あとは担当部の裁判官の判断とされるようです(2000年度裁判所書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」2019年補訂版328ページ)。考え方としては、原裁判所に移送する、管轄違いを理由として却下する、立件を取り消して原裁判所に回送する等の考え方があるとされます(2000年度裁判所書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」2019年補訂版328ページ。東京弁護士会の機関誌に掲載された東京高裁書記官の説明でも、控訴の場合に控訴状が誤って高裁に提出されたときは管轄違いを理由として控訴の却下という処理も考えられるとされています→こちらのファイルの6ページ右側参照)
管轄違いの場合は移送すべきで却下はできないはずですが(この点については、「管轄のない裁判所に訴え提起したとき」で説明しています)、上訴の際の上訴状を提出する裁判所については、不適法な上訴として移送せずに却下できるという裁判例もあり(東京高裁1967年6月19日決定)、担当する裁判所の裁判官の考えによっては予断を許しません。
移送の扱いとなったときは初めから移送先の裁判所に係属していたものとみなされます(民事訴訟法第22条第3項)ので適法な(少なくとも宛先と即時抗告期間を守ったという点では)再抗告となりますが、裁判所側で誤った提出を受理して移送することが法令上義務づけられているわけではないので、立件されなかったり立件が取り消された場合は、結果的に即時抗告期間を経過してしまい再抗告が不適法却下されることになりかねません。
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