◆短くわかる民事裁判◆
訴訟費用の負担の裁判
民事裁判の判決では、必ず訴訟費用をどちらがどれだけ負担するかが主文の中で示されています(ただし、この「訴訟費用」には、弁護士費用は含まれていません。よく誤解されるところですが。その点については「訴訟費用に含まれるもの」で説明しています)。
裁判所は、事件をそれで終わらせる裁判(原告の請求に対して正面から判断したいわゆる「本案判決(ほんあんはんけつ)」はもちろん、訴えを却下する判決や決定、訴状却下もこれに含まれます)をする際には、職権で、つまり当事者の申立てがなくても、訴訟費用の負担の裁判をしなければなりません(民事訴訟法第67条)。
訴訟費用は、原則として敗訴者が負担することとされています(民事訴訟法第61条)。
ただし、民事訴訟法は、当事者の不必要な行為によって生じた訴訟費用(大きなところでは鑑定費用、小さなところでは書類の送達・送付費用等が想定されます)や訴訟を遅滞させる行為によって生じた訴訟費用(不必要だった期日の旅費・日当等が想定されます)について、それらの行為を行った勝訴当事者に負担させることができ(民事訴訟法第62条、第63条)、一部敗訴の場合の訴訟費用の負担を裁量で定めることができる(一方に全部負担させてもよい)と定めています(民事訴訟法第64条)。
実際には、裁判所は、原告の請求のうち、認めた部分を金銭評価して、その割合で訴訟費用の負担を命じることが多いです。
原告が被告に対して500万円を請求し、300万円が認められた場合、「訴訟費用はこれを5分し、その2を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。」となるのがふつうです。
原告の請求が大部分認められ、わずかな部分が認められなかったに過ぎないときは、訴訟費用は被告の負担とするということもありますが、それでも按分する裁判官も少なくないように思えます。
解雇事件で地位確認請求とバックペイの支払請求をしているとき、地位確認が認められ、賃金の一部の支払請求が認められない(賞与については支払うことが確定した賃金ではないとして、解雇無効でもその部分は認めないという判決はわりとあります)というとき、地位確認が勝訴しているのだからその勝訴も負担割合に考慮すべきと思うのですが、賃金の請求額に対する認めた賃金の割合で決定されることが多いように思います。
主文が請求棄却の場合でも、その実質は原告勝訴のとき(例えば裁判中に被告が請求額を支払ってきた場合、和解や取下をせずに判決をもらうと、主文は請求棄却になります。一般の方の感覚からは驚かれるかと思いますが)は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は被告の負担とする。」という判決もあり得ます。
一部敗訴でも、ごくわずかな部分が認められなかっただけのような場合は、訴訟費用は全部被告の負担とされることがありますし、
もし裁判所が判決等の際に訴訟費用についての裁判をし忘れたときは、当事者の申立てまたは職権で、裁判所は訴訟費用について、言渡済の判決とは別に、決定で裁判をすることになります(民事訴訟法第258条第2項)。当事者は、判決のうち訴訟費用の負担の裁判だけについて控訴をすることはできません(民事訴訟法第282条)が、訴訟費用の負担の裁判以外の部分で控訴がなされた場合は、原審で訴訟費用の負担の裁判を忘れた場合も控訴審で1審分も含めて訴訟費用の負担の裁判をすることになります(民事訴訟法第258条第4項)
和解の場合に
訴訟費用とその取り立てについては「訴訟費用の取り立て(民事裁判)」でも説明しています。
モバイル新館の 「裁判所に納める費用(民事裁判)」でも説明しています。
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