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短くわかる民事裁判◆
費用計算書:期日旅費
 当事者本人や訴訟代理人が期日に出席した場合は、その旅費(交通費)も訴訟費用に計上することができます。
 対象となる期日は、「費用計算書:期日日当」で説明したのと同じです。口頭弁論期日、弁論準備期日、和解期日、進行協議期日のいずれも対象となり、判決言渡期日も対象となります。本人と訴訟代理人がともに出席した期日は、本人尋問の期日以外では、訴訟代理人は旅費計上の対象外となり、本人尋問期日は、本人と訴訟代理人がともに旅費計上の対象となります(民事訴訟費用法第2条第5号)。
 なお、日当の場合は、誰が対象でも同じ額ですが、旅費は誰が対象かで異なり得ます。訴訟代理人が複数出席した場合は最も旅費が安い1人のみが対象となり、また訴訟代理人の旅費は本人が出席した場合に裁判所が相当と認める額を超えることができないとされています(民事訴訟費用法第2条第5号)。訴訟代理人が遠くの裁判所に出廷する場合でも、本人がその裁判所の近くに住んでいる場合は本人を基準に計算し、本人がその裁判所と同じ簡易裁判所の管轄内に住んでいれば、代理人の旅費は現実にはどんなに多額の旅費がかかる場合でも1回300円となります。東京の弁護士にとっては、ちょっと困りものの規定です。

 当事者・代理人の出廷旅費は、住所・事務所と裁判所が同じ簡易裁判所管轄内の場合は、1回300円と決められています(ただし、両者の距離が500メートル以内の場合は0円)(民事訴訟費用法第2条第4号イ(1)、第5号、民事訴訟費用規則第2条第1項第2号)。
 裁判所と住所・事務所が離れている場合の出廷旅費はどうなるでしょう。民事訴訟費用法では、裁判が行われた裁判所(所在地を管轄する簡易裁判所)と住所・事務所所在地を管轄する簡易裁判所の距離を基準として最高裁規則(民事訴訟費用規則)で定める額とされています(民事訴訟費用法第2条第4号イ(1)、民事訴訟費用規則第2条第1項、別表第1。なお、民事訴訟費用法の規定は2つの簡易裁判所庁舎の所在する場所の「距離」と定めていますが、これは当然に直線距離を意味するものと解されています)。この金額は、10km未満は300円、10km以上100km未満は1kmあたり30円、100km以上301km未満は1kmあたり50円です(1km未満の端数切り捨て:民事訴訟費用規則第2条第1項第1号)。たとえば東京23区内に住所・事務所がある当事者・代理人がさいたま地裁に出廷する場合、直線距離は22kmで1回660円となります(さいたま地裁で訴訟費用額確定処分を申し立てたらこの金額でしたので確実です)。同様に東京23区内に住所・事務所がある当事者・代理人が名古屋地裁に出廷する場合、直線距離は265kmで1万3250円となるはずです(こちらは私の試算です)。この金額は現実の交通費よりかなり低く決められています。
 そういう場合に備えて、民事訴訟費用法では通常の経路及び方法で裁判所に行ってその際に支払った実額が最高裁規則で定める額を上回る場合、「領収書、乗車券、航空機の搭乗券の控え等の文書が提出されたときは、現に支払つた交通費の額」とされています(民事訴訟費用法第2条第4号イ(1))。この文書はどの程度のものを出す必要があるでしょうか。
 最高裁事務総局民事局監修の「民事訴訟費用等に関する執務資料(全訂版)」(2004年10月発行)では、「これらの疎明資料の提出が困難な場合には料金表や料金に関する交通機関からの聴取書等に加えて、当該交通機関を現実に用いたこと等に関する陳述書を提出させることになろう。」としています(同17ページ)。私の経験では、京都地裁のケースで、新幹線の切符は事前にコピーして領収書も取っておいたのですが、京都駅から裁判所最寄りの地下鉄丸太町駅までの地下鉄はどうしたらいいですかと京都地裁に恐る恐る聞いたところ、毎回地下鉄に乗って裁判所まで行きましたという陳述書を出せばいいですと言われホッとしました。他方、エイワに対する過払い金請求の事件を保土ヶ谷簡裁(エイワの本店所在地の横浜市西区を管轄)でやって訴訟費用額確定処分の申立をした際、京都地裁でやった例に従い、神田駅からJRで横浜駅まで550円、横浜駅から相鉄バスで交通裁判所まで216円の陳述書を出したところ、保土ヶ谷簡裁では領収書が出ない限り最高裁規則に従い1回390円しか認めないということでした。さいたま地裁に訴訟費用額確定処分を申し立てる際に聞いたところでは、やはり領収書が出ない限り規則所定の直線距離に従い1回660円しか認めないということでした。
 確実なことは言えませんが、私の経験上は、新幹線とかの切符を提出した場合は、その後裁判所までの旅費は領収書等がなくても報告書で認めてくれ、何もなしで全部報告書では実費額請求は認めてくれないということかなと思います。
 実費額請求の場合、「最も経済的な」「最も低額の」とは定められていませんので、合理的一般人が選択するであろう経路であれば認められます。私の経験では、京都地裁で、JR京都駅から京都地裁までは、地下鉄烏丸線の料金(京都市営バスの方がわずかながら安いのですが)が認められました。


 訴訟費用とその取り立てについては「訴訟費用の取り立て(民事裁判)」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる 「訴訟費用の負担(訴訟費用の取り立て)」でも説明しています。
  

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