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短くわかる民事裁判◆
土地管轄:複数被告への請求
 原告が、複数の被告に対して、共通する権利や同じ事実関係を理由とする請求を1つの裁判(1つの訴状)でをする場合、いずれかの被告について認められる管轄裁判所のどこにでも訴えを提起することができます(民事訴訟法第7条、第38条前段)。被告が複数の場合は、1人の被告に対して複数の請求をする場合(その場合については「土地管轄:複数の請求」で説明しています)とは違って、権利や事実関係が共通している必要があります。また少し紛らわしいですが、複数被告への請求をとりまとめて事物管轄を決める場合(その場合については「事物管轄:複数被告への請求」で説明しています)とは異なり、「同種の請求」ではダメです。

 例えば、貸主が借主に対して貸金返還請求をするとともに保証人に対して保証債務の履行請求をする場合、1つの貸金について借主が返済しない(返済が遅れている)という同じ事実関係に基づく請求ですので、貸主は借主の住所地で(保証人の住所地が遠方であっても)借主と保証人に対して訴えを提起できます。保証人の住所地で借主と保証人に対して訴えを提起することもできます。この場合、貸主は借主や保証人の住所地ではなく自分の住所地が義務履行地(ぎむりこうち)で土地管轄があるとして提訴するのがふつうですが。
 また交通事故の被害者が運転者に対して不法行為を理由として損害賠償請求をするとともに自動車の所有者に対して自賠法(じばいほう。自動車損害賠償保障法:じどうしゃそんがいばいしょうほしょうほう)の運行供用者責任(うんこうきょうようしゃせきにん)を理由として損害賠償を請求する場合、同じ1つの交通事故についての請求ですので、事故発生地や運転者の住所地で運転者と自動車所有者に対して訴えを提起することもできます。この場合も被害者は自分の住所地が義務履行地だとして自分の住所地で提訴することも当然できます。
※原告が義務履行地の管轄で原告住所地で訴えを提起できるのに、なぜそれ以外の土地管轄を気にする必要があるのかというと、原告から依頼を受けた弁護士が原告の地元の弁護士でない場合(多くは東京の弁護士ですね)、弁護士事務所所在地で起こせないかとあれこれ考えるからです。

 管轄についてはモバイル新館のもばいる 「どの裁判所に訴えるか」でも説明しています。
  

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