庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

短くわかる民事裁判◆
当事者能力
 未成年者(18歳未満)と成年被後見人(せいねんひこうけんにん:認知症、精神障害などにより判断能力が欠けている常態にあるとして家庭裁判所の後見開始の審判を受けた人)は、単独で訴訟行為をすることができず、法定代理人親権者後見人)が代理しないと、裁判の当事者になれません(民事訴訟法第31条)。
 したがって、未成年者が親権者によらないで訴えを提起した場合、訴えは不適法なものとなります(ただし、法定代理人から営業を許された場合のその営業についての訴訟や、未成年が雇用されている場合の使用者との労働関係についての訴訟などの例外はあります)。
 未成年者が弁護士(訴訟代理人)に委任してもだめで、法定代理人(親権者)が弁護士に依頼する必要があります。
 未成年者が親権者によらないで訴えを提起した場合、親権者がその後に追認すれば、最初から有効だったことになります。そのため、未成年者が親権者によらずに(訴状に親権者の記載なく)訴え提起した場合は、裁判所が原告に補正(親権者による追認)を命令し、補正されない場合は訴え却下の判決がなされることになります。
※原告側に訴訟能力がない(当事者能力がない)場合は、訴状の記載だけの問題ではないので、裁判長の訴状補正命令→命令による訴状却下(民事訴訟法第137条)ではなく、裁判所(合議事件なら3名の裁判官全員で)の補正命令(民事訴訟法第34条第1項)→口頭弁論を経ない判決による訴え却下(民事訴訟法第140条)と解されています。
 原告が未成年者を被告として法定代理人を示さずに訴えを提起したときは、訴状訂正の申立を行います。この場合、原告が自主的に訴状訂正(被告の親権者の記載)をしないときは、裁判長が補正(被告の親権者の記載)を命令し、補正されないときは命令で訴状が却下されることになります(民事訴訟法第133条第2項、137条)。
 被告が未成年で法定代理人(親権者、後見人)がいないときや法定代理人が代理できないとき(利益相反があるときなど)は、原告は裁判所に特別代理人の選任を求めて、その上で訴えを提起することができます(民事訴訟法第35条)。
(以上について、成年被後見人の場合も同じです)

 法人(会社等)は、代表者または支配人(しはいにん)を通じて訴訟行為をすることになります。代表権がなく支配人でもない者が権限があるように装ってした訴訟行為は無効になります。弁護士(訴訟代理人)への依頼も代表者か支配人がすることになります。
 そのため、裁判所は、会社が(代理人名ではなく)直接作成する書類(訴訟委任状、訴状、答弁書、準備書面等。実際よくあるのは取下同意書とか)には、必ず代表者名の入った記名押印を求めます(社名だけのものは受け付けません)(代理人:弁護士作成のものについては、弁護士自身に代理権があるのでそういう要求はされません)。

 自然人でも法人でもないものについては、法人でない社団(しゃだん)または財団(ざいだん)で代表者または管理人の定めがあるものは、裁判の当事者となれます(民事訴訟法第29条)。それについては、「法人でない社団の当事者能力」で説明しています。

 それ以外のものは、裁判の当事者になれません。
 環境保護を訴えて、アマミノクロウサギやオオヒシクイを原告とした訴訟が提起されたことがありますが、裁判所の強い指導により、自然人の原告が「アマミノクロウサギこと○○」となって裁判を続けたと聞いています。

 訴えの提起については「民事裁判の始まり」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる 「訴えの提起(民事裁判の始まり)」でも説明しています。
  

**_**区切り線**_**

短くわかる民事裁判に戻る

トップページに戻るトップページへ  サイトマップサイトマップへ

民事裁判の話民事裁判の話へ   もばいるモバイル新館 民事裁判の話