◆短くわかる民事裁判◆
和解条項:建物明渡(立退料と引き換え)
賃借人に賃料(家賃)滞納はあるけれど、その程度が甚だしいとも言えず、家主側も明渡しを確実にスムーズに受けることを重視して、立退料も提供するというようなことで和解する場合、次のような和解条項が考えられます。
1.原告及び被告は、別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)についての本件賃貸借契約を、本日、合意解除する。
2.原告は、被告に対し、本件建物の明渡しを令和○年○月○日まで猶予する。
3.被告は、原告に対し、前項の期日限り、原告から次項の金員の支払を受けるのと引き換えに、本件建物を明け渡す。
4.原告は、被告に対し、第2項の期日限り、被告から本件建物の明渡しを受けるのと引き換えに、立退料として金○○円を支払う。
5.被告は、原告に対し、令和△年△月△日から令和□年□月□日までの間の本件建物の未払い賃料合計△△円を支払う。
6.被告が、第3項の本件建物の明渡し義務を第2項の期限までに履行したときは、原告は、被告に対し、前項の金員の支払義務を免除する。
立退料の支払い条項は、明渡しと引き換えなので、現地引渡が基本となるので、振込払いではなく記載しています。引き換えだけど振込でいいと双方が合意すれば、振込の記載も、また実際の支払を振込にすることも可能です(今どきは、ネット送金も、入金のネット確認も可能ですし)。
建物明渡請求事件での賃貸人(家主)の利害は、賃貸人の人柄や価値観にもよりますが、多くの場合、いかにスムーズに早く退去して(明け渡して)もらえるかにあります。
上の文例では、(立退料を払うのですから、通常は未払い賃料とか賃料相当損害金はそれを引いて立退料を考える以上、取らないとなるところですが)あえて支払条項を入れ、かつ約束通りに明け渡してくれたら全部免除とすることで、賃借人の明渡しのインセンティブを作っているものです。建物明渡事件の和解では、そういったさまざまな工夫が試みられ、そういうところが弁護士の腕の見せどころとも言えます。
賃貸人(家主)側から見て、「和解条項:建物明渡(無条件)」で挙げている和解条項例は典型的な北風作戦、このページで紹介しているのは太陽作戦の一例です。両者の間とか、さらに外側でもいろいろな条項例が考えられます。
和解については「和解」でも説明しています。
モバイル新館の 「和解」でも説明しています。
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