◆短くわかる民事裁判◆
和解条項:抵当権抹消登記の例
例えば借金をした際に自分の所有する不動産に抵当権を設定した借主が、抵当権によって担保される債務(被担保債務:ひたんぽさいむ)は返済が終了したと主張して貸主(抵当権者)に対して抵当権設定登記抹消登記手続請求をし、借金がまだ一部残っているのでそれを完済することを条件に抵当権設定登記を抹消するという和解をした場合の和解条項は、通常、次のようにします。
1.原告は、被告に対し、△△として、金○○円の支払い義務があることを認める。
2.原告は、被告に対し、前項の金員を、令和○年○月○日限り、○○銀行○○支店の被告代理人名義の普通預金口座(口座番号○○)に振り込む方法により支払う。ただし振込手数料は原告の負担とする。
3.原告が前項の金員を支払ったときは、被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の土地についてされている○○法務局令和○年○月○日受付第○○号抵当権設定登記について、前項の弁済を原因とする抹消登記手続をする。この登記手続費用は原告の負担とする。
抹消登記手続の対象となる不動産は、通常は、「別紙物件目録」に、土地は「所在」、「地番」、「地目」、「地積」の4項目を、建物は「所在」、「家屋番号」、「種類」、「構造」、「床面積」の5項目を、登記簿の記載通りに記載して特定します。
抹消対象の登記は、管轄法務局の表示、受付日付、受付番号により特定します。
これらの記載が登記簿の記載と(少しでも)異なると抹消登記の実行に支障がありますので、細心の注意を払って確認します。
登記原因とその日付は登記事項ですので、記載できれば記載しますが、抹消登記手続の場合は、登記原因とその日付の記載がなくても、問題なく登記できているようです。
「被告は、・・・登記手続をする。」という記載ですが、和解成立後被告が何かを実際にする必要はなく、この条項のある和解調書で原告が単独で抹消登記をすることができます。
なお、実際に被担保債務全額の支払いが済んでいる場合は、上の文例の1項、2項は不要で、3項の「原告が前項の金員を支払ったときは」も不要となります。完済日が特定できればその日付の弁済を登記原因とすることになります。
現実的には、その場合は、訴訟提起するまでもなく被告が抹消登記手続に必要な書類一式を送ってくるか、逆に被告が会社の実態を欠き音信不通(ヤミ金融が貸付時に借主から抵当権設定書類をとって抵当権を設定、その後所在をくらませているなどのパターンでよくあります)で、和解もできず、公示送達などで判決を取って抹消するかということが多いと思います。
和解については「和解」でも説明しています。
モバイル新館の 「和解」でも説明しています。
**_****_**