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  弁護士は解雇された労働者をどれくらい復職させているか

ここがポイント 
 JILPTの調査から判断すると日本労働弁護団所属の弁護士でも解雇事件勝訴判決は5年に1件
 JILPTの調査から判断すると日本労働弁護団所属の弁護士でも判決により復職させた労働者は5年で0.4人
 労働者が解雇されてそれを争う裁判をした場合、実際にその労働者が復職できる割合はどれくらいでしょうか。また、労働側の弁護士は、特に専門の弁護士は、解雇事件の依頼を受けて、どれくらい勝訴判決を取り、依頼者である労働者を復職させているでしょうか。
 このことは、解雇された労働者、弁護士に事件を依頼しようと考えている労働者にとって強い関心があることです。しかし、長らくこれについては客観的なデータはなく、弁護士にとっても、せいぜい自分の周りの労働事件を扱っている弁護士に聞いてみてのいわば肌感覚程度しかわからないことでした。私にとっても、たぶんそういう周囲の様子からして、自分は平均以上というか相当よい方の成績を上げているものと思ってはいましたが、客観的な資料によるものではないので自信はありませんでした。

 これについて、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が2024年7月1日に調査報告書を発表しています(調査の概要はこちら、報告書全文はこちらから入手できます)。弁護士に対するアンケート調査で完全に客観的なものではありませんが、その調査結果はある面でそうだろうなと思えるとともにある面で衝撃的なものでした。
 この調査は日本労働弁護団(労働者側の弁護士団体)と経営法曹会議(使用者側の弁護士団体)、日弁連労働法制委員会、日弁連消費者問題委員会、日弁連貧困問題対策本部、東弁労働法制特別委員会、一弁労働法制委員会、二弁労働問題検討委員会の所属弁護士に呼びかけて2023年10月6日から11月6日までにWeb上の調査票への記入を求めて行われました。回答した弁護士は日本労働弁護団所属が101名、経営法曹会議所属が65名、その他を含め全体で231名でした(調査報告書12〜13ページ)。なお、回答者にもっぱら労働者側かもっぱら使用者側か労使双方の依頼を受けたかを聞いたところ、もっぱら労働者側という回答は81名でした(日本労働弁護団101名のうち「もっぱら労働者側」は75名で、労使双方が24名、不該当が2名でした:調査報告書16ページ)。
 2018年9月1日から2023年8月31日までの5年間に判決により終了した解雇・雇止め事件について、解雇無効の判決を受けた労働者は99人(事件としては76件:原告複数で勝訴した事件があるため)、判決を受けて復職した労働者は37名でした(調査報告書23ページ)。このうち「もっぱら労働者側」と回答した弁護士による解雇無効判決を受けた労働者は71名(事件数53件)、判決を受けて復職した労働者は29名でした(調査報告書24ページ)。
 そうすると、これらの解雇無効(労働者勝訴)判決をすべて日本労働弁護団所属の弁護士が取ったと仮定した場合でも、日本労働弁護団所属の弁護士1人あたりで見ると、勝訴判決は5年で1件、復職は5年で0.4人(1年間だと勝訴判決は0.2件、復職は0.08人)ということになります(アンケートに回答した弁護士全員で1人あたりを見ると勝訴判決は5年で0.43件、復職は5年で0.16人)。
 労働者側勝訴の判決(解雇無効判決)はこんなにも取れず、復職はこんなにも稀れというのが実情です。しかもこの調査は、一般的に弁護士にアンケートを取ったのではなく、労働事件に慣れていると思われる弁護士を対象として行った(そういう弁護士以外には告知もされなかった)ものです。
 私は、このアンケートには回答していません(回答を求められてアクセスはしましたが、設問が多く時間制限付きだったので面倒くさくなってやめました)が、このアンケート対象期間の5年間では、解雇無効の判決5件を取って、そのうち2名は復職させています。(「最近の解雇・雇止め事件解決結果」のページで全件紹介しています)
 この調査結果を見て、自分はやはり相当程度いい結果を出しているものと自信を持ってよいのだと腹落ちしました。もっとも、調査結果の数字は、労働事件を扱う弁護士全体としてちょっと情けないと思いますが。
(2025.9.20記)
【解雇事件よもやま話をお読みいただく上での注意】
 私の労働事件の経験は、大半が東京地裁労働部でのものですので、労働事件の話は特に断っている部分以外も東京地裁労働部での取扱を説明しているものです。他の裁判所では扱いが異なることもありますので、各地の裁判所のことは地元の裁判所や弁護士に問い合わせるなどしてください。また、裁判所の判断や具体的な審理の進め方は、事件によって変わってきますので、東京地裁労働部の場合でも、いつも同じとは限りません。

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