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JILPTの調査によれば2020年と2021年の東京地裁での解決金の中央値は賃金7.3か月分、賃金12か月分以上は31.6%、18か月分以上は19.6%、24か月分以上は11.6%
労働者が解雇されてそれを争う裁判をした場合、全体の3分の2程度は、労働者が合意退職して解決金の支払いを受ける(金銭解決)和解で終了しています。労働者側も時間の経過や裁判での会社側の態度などから復職の意欲を失うということも少なくありませんし、勝訴しても実際には会社側が(負ければ賃金は払わざるを得ないが)復職はさせないということもあり、金銭解決が現実的であったり望ましいと考えることが少なくないからです。
解雇事件での金銭解決の解決金の相場というか、実情はどれくらいでしょうか。
このことは、解雇された労働者、弁護士に事件を依頼しようと考えている労働者にとって強い関心があることです。しかし、長らくこれについては客観的なデータはなく、弁護士にとっても、肌感覚として、裁判官は解雇無効が固いと考えている事件では賃金24か月分あたりを上限としてそこから労働者の落ち度がある分を減額するというような考えを持つことが多いという程度でした。
これについて、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が2023年4月25日に調査報告書を発表しています(調査の概要はこちら、報告書全文はこちらから入手できます)。
この調査はJILPTの研究員が東京地裁で2020年と2021年(暦年:1月1日から12月31日まで)に和解で終了した事件の事件記録を閲覧して調査項目のデータを入力したというもので(調査報告書12ページ)、信頼度はかなり高いものといえます。
※JILPTは対象裁判所を「1庁」とするだけで、どこの裁判所かは記載していませんが、同時に調査した労働審判の件数(2年間で900件を想定)が東京地裁以外にはあり得ない数字なので、東京地裁と判断します。
この調査でまとめられた解雇事件の解決金の賃金月額に対する割合(月収表示)は次の表の通りです(調査報告書85ページ)。
ちなみに中央値は7.3か月分、平均値は11.3か月分だそうです(調査報告書85〜86ページ)。
このデータを見ると、最頻値が6か月分以上9か月分未満、12か月分以上は全体の31.6%、18か月分以上は19.6%、24か月分以上は11.6%となっています。
このデータは、裁判官の心証が解雇無効(労働者勝ち筋)の事件も解雇有効(労働者負け筋)の事件も区別されず一体となっています(調査報告書も、そこは判断できないので、分析に当たっては留意するよう記載しています:調査報告書15ページ)(この調査は、解雇の金銭解決制度の検討のために行われ、そこでは解雇無効の場合の解決金相場が関心事項ですので、その意味ではこの調査は役に立たないわけですが)。
しかし、原告側は基本的に不当解雇を主張し勝てると考えて提訴するわけで、中央値が7.3か月分というのは労働者側としては哀しいところです。
そうはいっても、先に述べたように、この調査自体はかなり信頼性の高いものですから、全体としてみると、解雇事件の合意退職和解の解決金の実情はこのとおりと受け止めるしかありません。なかなかに現実は厳しいということです。
私の合意退職和解の実績は、「最近の解雇・雇止め事件解決結果」のページで2015年以降のもの全件を紹介しています。
私の実績は中央値が16.3か月分、12か月分以上が65.5%、18か月分以上が41.4%、24か月分以上が31.0%、36か月分以上が6.9%となりますので、全体から見ると相当高い解決金を取っていると評価できると思います。
(2025.9.22記、私の実績につき9.29更新)
【解雇事件よもやま話をお読みいただく上での注意】
私の労働事件の経験は、大半が東京地裁労働部でのものですので、労働事件の話は特に断っている部分以外も東京地裁労働部での取扱を説明しているものです。他の裁判所では扱いが異なることもありますので、各地の裁判所のことは地元の裁判所や弁護士に問い合わせるなどしてください。また、裁判所の判断や具体的な審理の進め方は、事件によって変わってきますので、東京地裁労働部の場合でも、いつも同じとは限りません。
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