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【訴訟費用の負担】
 民事裁判の判決では、主文で、原告の請求に対する判断とともに、訴訟費用をどちらがどれだけ負担すべきかの判断が示されます。
 それにより訴訟費用の負担割合は決まりますが、実際の取立をする場合は、訴訟費用額確定処分(そしょうひようがくかくていしょぶん)という手続をする必要があります。現実の民事裁判では、判決で訴訟費用の負担が定められても、訴訟費用額確定処分までは行わずに訴訟費用の取り立てがなされずに終わることが多いです。

《訴訟費用の負担の主文の意味》
 訴訟費用の負担に関しては、原告側の全部勝訴ならば通常「訴訟費用は被告の負担とする」とされますし、原告側の全部敗訴なら通常「訴訟費用は原告の負担とする」となります。
 一部勝訴 の場合は、通常、請求額に対してどれだけの請求が認容されたかに応じて、原告、被告に負担を配分します。原告の請求の約4分の3が認められれば、通常は 「訴訟費用はこれを4分し、その3を被告の負担とし、その余を原告の負担とする」(「訴訟費用はこれを4分し、その1を原告の負担とし、その余を被告の負担とする」でも同じ)というような形になります。
慰謝料請求の判決で、訴訟費用の9割原告負担。これ、被告の実質勝訴ですよね。
不法行為の裁判で原告の主張が一部でも認められたら、違法と判断された訳で、ふつうの感覚では被告敗訴でしょ。

 訴訟費用の負担が一部ずつとされた場合の読み方について簡単に説明します。上の4分の1が原告負担、4分の3が被告負担の場合、原告が裁判所に納めた費用と次に説明する納めていないけど請求できる費用の額の4分の3を原告が被告に請求でき、被告が裁判所に納めた額と被告が納めていないけど請求できる費用の4分の1を原告に請求できて、現実にはその差額で決済するということになるのです。
 裁判所に納めるべきだけど納めていない訴訟費用(訴訟救助を受けた費用)は、負担割合に応じて裁判所から直接請求されます。

《訴訟費用の内容と計算》
 相手方に負担させる、すなわち請求することができる訴訟費用には、大きく分けて裁判所に納めた訴訟費用と納めていないけど請求できる訴訟費用があります。
 裁判所に納めた費用は、印紙、予納郵券(ただし、この場合裁判所から返還された残郵券額を差し引いた費消額)、証人の旅費・日当、鑑定費用等があり得、現実に納めた額を基準に計算します。
 裁判所に納めていないけれども請求できる訴訟費用には、書類作成提出費用、当事者・代理人の出廷旅費・日当などがあります。
 裁判所に提出する役所等からの取り寄せ書類(代表的には、会社を相手に裁判を起こすときの「資格証明書」となる商業登記簿謄本)の提出費用は役所に払う手数料プラス168円(取り寄せに通常必要な往復郵送料。これは現実の費用と関係なく)が認められます。
 書類作成提出費用は、提出した訴状や答弁書、準備書面が5通以内なら1500円、6通以上20通以内ならそれに1000円追加(以後15通区切りで 1000円ずつ追加)となります。また提出した証拠書類が16通以上65通以内ならまた1000円追加(以後50通区切りで1000円ずつ追加)となります。
 当事者・代理人の出廷旅費は、住所・事務所と裁判所が同じ簡易裁判所管轄内の場合は、1回300円と決められています(ただし、両者の距離が500メートル以内の場合は0円)。出廷した裁判所が住所・事務所所在地の簡易裁判所の管轄外の場合は2つの裁判所の「直線距離」に応じて金額が定められていますが、通常の経路と方法で出廷して現実の旅費がそれを超えることを領収書・切符・航空券の控え等で証明した場合は支出した実額とされます。代理人の出廷旅費は、当事者が出廷する場合の旅費を超えられないという規定がありますので、当事者が裁判所のすぐ近くに居住していて遠くから代理人が出廷する場合は旅費実額の請求ができないことになります。
 当事者・代理人の出廷日当は、1日3950円と決められています。

《訴訟費用額確定処分》
 訴訟費用の取り立てを行う場合、訴訟費用額確定処分の申立をして、確定処分を受ける必要があります。
 訴訟費用額の確定処分は、判決が確定した後に1審の裁判所の書記官が行います。
 訴訟費用額確定処分申立は、申立書と訴訟費用額の計算書(必要に応じてそれを裏付ける書類も)を1審の裁判所の民事受付に提出します。申立書の副本(申立書と同じものをつくって印鑑を押します。訴訟費用額の計算書もつけます)は、民事受付に持っていくのではなく、相手方に直接送ります(FAX送信で OK)。
 受付で民事雑事件として事件番号が振られ(事件番号の記号は「モ」になります)、担当書記官に送られます。
 申立があると、書記官は相手方に対して相当の期限を定めて、意見書の提出を求めます(ただし、相手方が訴訟費用を全部負担すべき場合で訴訟費用の額が記録上明らかなときは意見書の提出を求めないことがあります)。相手方は、通常は、相手方に生じた訴訟費用を主張して計算書とともに提出します。もちろん、申立書の計算等に誤りがあるときはそれを指摘します。
 相手方の意見書が出た後(あるいは相手方が意見書を提出せずに定められた期間を経過した後)書記官は、訴訟費用の支払を命じます。双方が一部ずつ訴訟費用を負担すべき場合で、相手方にも訴訟費用が生じている場合は、両者を相殺して差額のみの支払が命じられます。この書記官の作成する文書は「訴訟費用額確定処分」と記載され、この文書によって強制執行をすることができます。
 訴訟費用額確定処分は、早ければ(訴訟費用が100%相手方負担のシンプルなケースで、担当書記官が慣れている場合)申立から1週間足らずで出ますが、計算が複雑だったり、担当書記官が慣れていなかったり(訴訟費用額確定処分の申立はそれほどなされませんので、書記官が初体験ということもあり得ます)すると2か月とか3か月かかることもあります。


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